
建設工事では、工事代金の未払い、工事の不具合や瑕疵(かし)、追加工事の費用負担、工期の遅延など、さまざまな原因で当事者間にトラブルが発生することがあります。こうした紛争は、放置すると損害が拡大するだけでなく、事業の継続にも影響を及ぼしかねません。万が一紛争が生じた場合には、早期に適切な対処をとることが極めて重要です。
1 まずは契約書と証拠の確認を
紛争が発生した際、最初に行うべきことは契約書の内容を正確に確認することです。建設業法第19条では、請負契約を締結する際に工事内容・代金額・工期・紛争解決方法などの重要事項を書面に記載し、相互に交付することが義務付けられています。追加工事や変更工事についても、口頭の約束だけで済ませず書面で合意内容を残しておくことが、紛争時の証拠として大きな意味を持ちます。まずは手元にある契約書、注文書、請書、打合せ記録、写真、メールなどの関連資料を整理しましょう。
2 当事者間の話し合いによる解決
紛争解決の第一歩は、当事者同士の話し合いです。建設業法第18条では、請負契約の当事者は対等な立場で合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実に履行することが求められています。感情的にならず、事実と契約内容に基づいて冷静に協議を行うことが解決への近道です。合意に至った場合は、必ずその内容を書面に残しておきましょう。
3 建設工事紛争審査会の活用
当事者間の話し合いで解決が難しい場合、建設工事紛争審査会を利用する方法があります。建設工事紛争審査会は、建設業法第25条に基づき国土交通省および各都道府県に設置された公的なADR(裁判外紛争処理)機関です。法律・建築・土木などの専門家が委員として、あっせん・調停・仲裁の3つの手続きにより紛争の解決を図ります。
あっせんは、委員が当事者双方の主張を聴いて要点を確かめ、誤解を解くことで和解を目指す手続きです。審理回数は平均1~2回と少なく、早急な解決が必要な場合や争点が比較的少ない場合に適しています。調停は、委員がより積極的に関与し、調停案を提示して解決を目指すもので、あっせんよりも踏み込んだ手続きです。仲裁は、当事者間にあらかじめ仲裁合意がある場合に利用でき、仲裁判断には確定判決と同一の効力があります(仲裁法第45条第1項)。
裁判と比較して、審査会での手続きは非公開で行われるため企業の信用への影響が少なく、専門家による迅速な解決が期待できるという利点があります。
4 弁護士への相談・民事訴訟
審査会の手続きでも解決に至らない場合や、紛争の規模が大きい場合には、弁護士に相談し、民事訴訟を検討することも選択肢の一つです。ただし、建設工事に関する訴訟は技術的な争点が多く長期化する傾向があるため、費用や時間を十分に考慮した上で判断することが大切です。
5 紛争を未然に防ぐために
最も重要なのは、紛争を起こさないための予防策です。契約書は必ず作成し、追加・変更工事が生じた場合にはその都度書面で合意を取ること、工事記録や写真を日常的に残しておくこと、そして発注者と施工者が日頃から円滑なコミュニケーションを図ることが、紛争防止の基本です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。 実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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