建設業許可を個人事業主として申請する場合、確定申告の方式が「白色申告」であると、書類準備の段階で大きな壁にぶつかることがあります。その壁の正体は、財務諸表のうち「貸借対照表」の作成です。

建設業許可申請で必要な財務諸表

 個人事業主が建設業許可を申請する際には、貸借対照表(様式第18号)と損益計算書(様式第19号)の2種類の財務諸表を提出しなければなりません。

 これらは確定申告書とは別物であり、建設業法に定められた独自の様式で作成する必要があります。税理士が作成した申告書をそのまま流用することはできず、専用の様式への書き換えが求められます。

白色申告に貸借対照表はない

 複式簿記による青色申告(65万円控除または55万円控除)の場合、確定申告書には貸借対照表が添付されています。各勘定科目の数字を建設業許可用様式に転記するだけで、比較的スムーズに作成できます。なお、簡易簿記による青色申告(10万円控除)の場合は貸借対照表の作成義務がないため、その点は白色申告と同様の状況となります。

 ところが白色申告の場合、確定申告書に添付されるのは収支内訳書のみです。収支内訳書は単式簿記(現金主義)をもとに作成されるため、資産・負債・純資産の残高情報がほぼ記載されていません。貸借対照表を作成するための土台となるデータが、申告書の中に存在しないのです。

貸借対照表をゼロから組み立てる作業が必要になる

 白色申告の個人事業主が貸借対照表を作成するには、決算時点(12月31日)の財産状況を一から調べて数値を集める作業が必要です。具体的には、預貯金残高・売掛金(完成工事未収入金)・棚卸資産・固定資産・借入金・買掛金など、資産の部・負債の部・純資産の部の各科目ごとにデータを収集・集計しなければなりません。

 さらに、資産合計と負債・純資産合計が一致(バランス)しなければならないという原則があります。数字のズレが生じた場合は原因を探して修正する必要があり、簿記や会計の知識がないと対処が難しい場面も出てきます。

損益計算書も油断はできない

 損益計算書については白色申告の収支内訳書を参考に作成できますが、売上を「完成工事高」として切り分けたり、原価を「完成工事原価」として内訳ごとに分類したりする作業が必要です。転記だけで完成するわけではなく、建設業特有の科目区分への振り替えが求められます。

毎年繰り返される負担

 建設業許可を取得した後も、毎事業年度終了後4か月以内に決算変更届を提出する義務があります(建設業法第11条第2項)。この届出にも財務諸表一式が必要なため、白色申告を続ける限り、貸借対照表の作成負担が毎年発生し続けることになります。

 申告方法の変更については税務の専門家に相談のうえ、青色申告への切り替えを検討することも、長期的な視点から選択肢のひとつとなりえます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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