
建設業における見積もりと契約交渉のルールが、法律の改正によって大きく変わりました。2024年6月に成立した「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」は段階的に施行され、2025年12月12日に全面施行を迎えました。本記事では、特に見積交渉に関係する改正点を整理します。
なぜ見積交渉のルールが変わったのか
建設業界では、資材価格の高騰が続く中で、その上昇分が適切に工事費へ反映されず、労務費へのしわ寄せが慢性的に発生してきた背景があります。発注者優位の力関係のもと、受注側が不利な条件を飲まざるを得ない商慣行が問題視されており、担い手確保の観点からも是正が急務とされていました。こうした構造的課題に対応するため、今回の法改正では見積りと契約交渉に関する具体的な規制が設けられました。
内訳明示見積書の作成が努力義務に
改正建設業法では、建設業者が契約締結前に材料費・労務費・必要経費の内訳を記載した見積書(材料費等記載見積書)を作成するよう努めなければならないと定められました(建設業法第20条第1項)。この努力義務は、元請と下請の間だけでなく、発注者と元請の間でも適用されます。見積りの根拠を明確にすることで、交渉における透明性を高めることが目的です。
著しく低い見積りの提出・依頼が禁止に
今回の改正で注目すべき点の一つが、著しく低い材料費等による見積りの提出や変更依頼の禁止です。通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回る見積りを提出することは受注者に禁じられており(同法第20条第2項)、また発注者がそのような変更を求めた上で請負契約を締結した場合は国土交通大臣等による勧告・公表の対象となります(同法第20条第6項・第7項)。これにより、受発注者双方に対して適正な見積りを求める仕組みが整備されました。
「おそれ情報」の通知義務と誠実協議の努力義務
資材高騰など請負代金に影響する事象が生じる「おそれ」がある場合、受注者は見積書の交付時などに発注者へ通知する義務を負います(同法第20条の2第2項)。この通知を踏まえ、契約後に実際に事象が発生した際には、受注者は発注者に対して工期・工事内容・請負代金の変更協議を申し出ることができます。民間発注者は正当な理由なく協議を拒んだり、合理的な期間以上に協議を引き延ばしたりしないよう、誠実に協議に応じる努力義務を負います(同法第20条の2第4項)。なお、公共発注者の場合はこれが義務となります。
原価割れ契約の禁止も受注者側に拡大
これまで発注者側にのみ課されていた原価割れ契約の禁止規定が、受注者側にも拡大されました(同法第19条の3第2項)。受注のために採算を無視した値付けを行うことは、技能者の処遇悪化につながるとして、改正法により禁止の対象とされています。
今回の改正は、建設業における見積交渉を「力関係ではなく根拠に基づく交渉」へ転換することを目指したものです。実際の運用に当たっては、各行政庁の指導や最新のガイドラインを随時確認することが重要です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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