
建設業界では長年にわたり、工期ダンピングと呼ばれる問題が深刻化してきました。工期ダンピングとは、建設工事を施工するために通常必要とされる期間よりも著しく短い期間を工期とする請負契約のことです。無理な工期設定は、現場労働者の長時間労働を強いるだけでなく、手抜き工事や重大事故のリスクを高める要因ともなります。
こうした問題を受け、令和7年(2025年)6月1日に改正建設業法が施行されます。今回の改正は「新・担い手三法」の一環であり、建設業法のほか、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)、および公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)もあわせて整備されました。建設業における働き方改革と工期の適正化を推進することが、改正全体の目的とされています。
改正前の規制内容と今回の変更点
改正前の建設業法第19条の5では、工期ダンピングの規制対象は発注者側のみとされていました。しかし今回の改正により、受注者(請負人)側も規制の対象となりました。これにより元請・下請を問わず、著しく短い工期での請負契約を締結することが法律上禁止されます。これまで「受注競争に勝つため」という理由から無理な工期で受注する慣行が一部で見られましたが、今後はそのような契約自体が違法となります。
「著しく短い工期」の判断基準
どの程度が「著しく短い」に該当するかは、工事ごとに異なります。判断の拠りどころとなるのが、中央建設業審議会が作成・勧告している「工期に関する基準」(令和6年3月27日最終改定)です。この基準では、週休2日相当の休工日の確保や、気象・資材遅延に対する余裕期間の設定など、複合的な要素をふまえた工期算定が求められています。
違反した場合のペナルティ
工期ダンピングに該当する契約を締結した場合、国土交通大臣または都道府県知事から勧告を受けることがあります。勧告に従わない場合には企業名の公表という措置がとられます。
建設業者が取り組むべき実務対応
受注段階では、工事内容や規模に見合った適正な工期を積み上げ方式で算定し、不当な短工期での受注を避けることが基本です。また、資材価格の変動や天候リスクに備えるため、請負契約書に価格変動条項・工期変更条項を盛り込んでおくことも有効です。なお、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が適用されており、工期ダンピングによる長時間労働は労働法上の違反とも重なるリスクがあります。
工期の適正化は、労働環境の改善にとどまらず、工事品質の確保や企業の信頼維持にも直結する重要課題です。改正法の内容を正しく理解したうえで、適切な工期管理の体制を整えることが求められています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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