
建設業法の条文を丁寧に読むと、「建設業者」と「建設業を営む者」という二つの似た表現が頻繁に登場します。一見同じ意味のようですが、建設業法上はまったく異なる概念として定義されており、どちらの規定が自社に適用されるかを左右する重要な違いがあります。
「建設業を営む者」とは
「建設業を営む者」とは、建設業法第2条第2項に定める「建設業」、すなわち「元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業」を行うすべての事業者を指します。許可の有無は問いません。軽微な建設工事(1件の請負代金が500万円未満等)のみを請け負い、許可を取得していない業者も、この概念に含まれます。
建設業法第1条(目的)が「建設業を営む者の資質の向上」を掲げていることからも、同法が許可業者だけでなく、建設業に関わる事業者全体を視野に入れていることがわかります。
「建設業者」とは
「建設業者」は建設業法第2条第3項において「第3条第1項の許可を受けて建設業を営む者」と明確に定義されています。国土交通大臣または都道府県知事から建設業許可を受けた者に限られます。許可を取得せずに建設業を営む者は「建設業を営む者」には該当しても、法律上の「建設業者」とは呼びません。
条文上の使い分けが持つ意味
建設業法の各条文では、この二つの表現が意図的に使い分けられています。
たとえば、「下請契約」の定義(第2条第4項)は「建設業を営む者」同士の契約とされており、一次下請・二次下請のいずれかに無許可業者が入っていても、下請契約として扱われます。
一方、「元請負人」の定義(第2条第5項)では「下請契約における注文者で建設業者であるもの」とされており、元請負人になり得るのは許可業者に限定されています。
また、主任技術者・監理技術者の配置義務(第26条)や経営事項審査(第27条の23)は「建設業者」にのみ課せられた義務です。一方、特定建設業者が下請負人の法令違反を是正するよう努める義務を定めた第24条の7では、違反した「建設業を営む者」が無許可業者の場合の通報先まで規定されており、無許可業者を含む概念として「建設業を営む者」が使われています。
まとめ
許可の有無を問わず建設業を行うすべての事業者が「建設業を営む者」であり、その中でも許可を取得した者だけが「建設業者」に該当します。条文の主語がどちらになっているかによって、自社に適用される義務や権利が変わります。建設業に関わる事業者は、この違いをしっかりと把握したうえで、それぞれの規定を確認することが求められます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
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