建設業では、元請業者と下請業者の間に取引上の力関係の差が生じやすい構造があります。こうした不均衡を是正し、下請業者を保護するために、建設業法は具体的なルールを定めています。

 一般に「下請保護」というと下請代金支払遅延等防止法(下請法)が思い浮かぶかもしれませんが、建設工事の請負契約は下請法の適用対象外とされています。その代わりとして、建設業法が下請業者保護の中心的な役割を担っています。

①書面による契約の義務(第19条)

 元請・下請双方は、契約締結の際に工事内容・請負代金・工期など法定16項目を記載した書面を作成し、互いに交付しなければなりません。口頭や曖昧な合意のみで工事を進めることは認められず、追加・変更が生じた場合も同様に書面が必要です。

②見積期間の確保(第20条)

 元請業者は、下請業者が適正な見積りを行えるよう、工事の予定価格に応じた一定の期間を設けなければなりません(建設業法施行令第6条)。具体的には、予定価格500万円未満は中1日以上、500万円以上5,000万円未満は中10日以上、5,000万円以上は中15日以上の見積期間が必要です。期間を設けずに見積りを求めることは建設業法違反となります。

③不当に低い請負代金の禁止(第19条の3)

 元請業者は、自らの取引上の地位を利用して、通常必要とされる原価を下回る請負代金で下請契約を締結することが禁止されています。いわゆる「指値発注」や「赤伝処理」はこの規定に違反する可能性が高いとされています。令和6年の建設業法改正では、原価割れ契約の禁止が下請負人側にも課せられる規定が追加されました(公布から1年6か月以内に施行)。

④不当な資材購入等の強制禁止(第19条の4)

 元請業者が契約締結後に、特定の資材や機械器具の購入先を一方的に指定・強制することは禁止されています。下請業者の同意なく費用を負担させるような行為は認められません。

⑤下請代金の支払期限(第24条の3・第24条の6)

 元請業者は、注文者から出来高払・竣工払を受けた日から1か月以内、かつできる限り短い期間内に、下請業者へ下請代金を支払わなければなりません。また、特定建設業者が元請となる場合は、これに加えて、下請業者から目的物の引渡しの申出があった日から50日以内に支払う義務があります。発注者からの入金の有無にかかわらず、いずれか早い期限までに支払いを完了させる必要があります。

違反した場合のリスク

 建設業法違反が認められた場合、国土交通大臣または都道府県知事による指示処分・営業停止処分・許可取消処分の対象となります。処分内容は国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで公表されるため、企業の信用にも直結します。

 元請業者・下請業者双方が建設業法のルールを正しく理解し、対等な取引関係を構築することが、建設業界全体の健全な発展につながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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