
建設業許可を取得しようとするとき、「国土交通大臣許可」と「都道府県知事許可」という2つの区分があることに気づく方も多いでしょう。この2つの区分について、「大臣許可の方が格上なのでは?」と誤解されることがありますが、実際の違いはシンプルな基準によって決まります。本記事では、その違いと実務上の注意点をわかりやすく解説します。
許可区分の基準は「営業所の所在地」
大臣許可と知事許可を分ける基準は、工事の規模や請負金額ではなく、「営業所の所在地」です。建設業法第3条において、次のように規定されています。
2つ以上の都道府県に営業所を設けて営業する場合は国土交通大臣許可が、1つの都道府県内のみに営業所を設けて営業する場合は都道府県知事許可が必要となります。
たとえば、愛知県に本店があり、東京都にも支店(建設業の営業活動を行う事務所)がある場合は、国土交通大臣許可が必要となります。一方、愛知県内に複数の営業所があっても、すべてが愛知県内であれば愛知県知事許可となります。
よくある誤解:施工できる地域に制限はない
「知事許可しか持っていないから他県の工事は受けられない」という誤解がよく見られますが、これは正確ではありません。大臣許可・知事許可のいずれであっても、建設工事を施工できる地域に制限はなく、全国どこでも工事を行うことが可能です。
ただし、注意が必要なのは営業活動(請負契約の締結)は、許可を受けた営業所でのみ行うことができるという点です。たとえば愛知県知事許可の業者が東京都内の工事を行うことは可能ですが、その契約は愛知県内の営業所で締結する必要があります。
大臣許可への「許可替え」とは
知事許可を取得している業者が、他の都道府県に新たに営業所を設けた場合は、「許可替え新規」と呼ばれる手続きが必要です。これは、既存の知事許可を廃止して国土交通大臣許可に切り替えるものであり、同一業者が知事許可と大臣許可の両方を同時に持つことはできません。
大臣許可の申請は、主たる営業所を管轄する地方整備局へ申請します。なお、令和2年4月1日以降は都道府県経由事務が原則廃止されていますが、申請方法の詳細については各管轄の地方整備局に事前に確認することをおすすめします。
大臣許可のメリット・デメリット
大臣許可を取得することで、各都道府県に営業所を持つことができ、地域密着型の受注活動がしやすくなるというメリットがあります。特に地方公共団体の公共工事では、地域内に営業所を持つ事業者が入札で有利になるケースもあります。
一方で、大臣許可の取得には登録免許税(15万円)が必要であり、申請手続きも都道府県知事許可に比べて複雑になる点や、許可取得までの審査期間が約3〜4か月と長くなる点がデメリットとして挙げられます。
まとめ
国土交通大臣許可と都道府県知事許可の区分は、企業規模や工事の範囲ではなく、あくまで「どこに営業所を置くか」によって決まります。事業拡大に伴って新たな都道府県に営業所を設ける際には、許可区分の変更(許可替え)が必要になることを念頭に置いておくことが重要です。許可区分の変更を検討される場合は、早めに管轄行政庁または専門家に相談することをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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