
建設業を営む会社が事業の引き継ぎや売却を行う場面で、「建設業許可はどうなるのか」という疑問を持つ方は多い。かつては事業を譲り渡した際、譲受側が新たに許可を取り直す必要があり、その間に「許可の空白期間」が生じるという問題があった。
この問題を解消するために、令和2年(2020年)10月1日施行の建設業法改正により第17条の2が新設され、譲渡および譲受けによる建設業許可の承継制度が創設された。事前に許可行政庁の認可を受けることで、譲受人が譲渡人の建設業者としての地位をそのまま引き継ぐことが可能となった。
承継できる内容
この制度により承継できるのは、許可そのものだけではない。許可番号・経営事項審査の結果・過去に受けた監督処分の履歴も含めて、建設業者としての地位をまるごと引き継ぐことになる。プラスの権利だけでなく、マイナスの履歴も承継される点に留意が必要だ。
なお、承継の対象は許可を受けている建設業の全部であり、特定の業種のみを選んで承継することはできない。また、承継と同時に業種を追加したり削除したりすることも認められていない。
許可の有効期間と経審の「営業年数」に注意
承継後の許可の有効期間については、承継日の翌日から新たに5年間が起算される(建設業法第17条の2第7項)。譲渡人の残存期間がどれほど残っていても引き継がれず、リセットされる仕組みだ。そのため、承継後は速やかに更新スケジュールを管理する必要がある。
また、経営事項審査(経審)の結果は承継されるが、評点項目のひとつである「営業年数」については承継されず、ゼロから再起算となる点も見落としがちな注意点だ。公共工事の入札参加を予定している場合は、この点も踏まえた上で事業譲渡のスケジュールを検討することが重要である。
認可申請の注意点
承継制度を利用するには、譲渡・譲受けの効力発生日より前に、譲渡人と譲受人の連名で認可申請を行う必要がある。効力発生後に申請しても承継は認められない。申請の受付期間は行政庁ごとに異なり、たとえば東京都では「承継予定日の2か月前から25日前まで」とされているように、自治体によって受付可能な期間が定められている。早めに管轄の行政庁へ事前相談を行い、スケジュールに余裕を持って臨むことが不可欠だ。
申請先は、譲渡人が国土交通大臣許可を受けている場合は国土交通大臣、都道府県知事許可の場合は原則として当該都道府県知事となる。ただし、譲受人が大臣許可業者または別の都道府県の知事許可業者である場合などは、譲受人の管轄する地方整備局が申請先となる。
承継が認められないケース
すべての事業譲渡で承継制度が使えるわけではない。譲渡人が一般建設業の許可を受けており、譲受人が同一業種の特定建設業の許可をすでに持っている場合(またはその逆)は、承継の認可を受けることができない。この場合は、事前に譲渡人側で該当業種を廃業届により一部廃業した上で申請するか、改めて許可を取得し直すことになる。
譲受人に求められる要件
承継の認可を受けるためには、譲受人が通常の建設業許可と同様の要件を満たしていることが前提となる。具体的には、常勤役員等(経営業務管理責任者)と専任技術者を確保し、その常勤性を雇用契約書や社会保険加入状況などで証明できることが必要だ。書類上だけでなく、実際の勤務実態が伴っているかが審査のポイントとなる。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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