
個人事業主として建設業を営む方が亡くなった場合、その建設業許可はどうなるのでしょうか。以前は許可が自動的に失効し、後継者が改めて許可を取得し直す必要がありました。しかし、令和2年(2020年)10月1日に施行された改正建設業法により、相続による許可の引き継ぎが可能になりました。本記事では、建設業法第17条の3に定められた相続の認可制度について解説します。
改正前はどうだったのか
改正前の建設業法では、許可はあくまでも許可を受けた本人に紐づくものであり、事業主が死亡した場合、その許可は原則として消滅していました。後継者が引き続き建設業を営むためには、新たに建設業許可を取得し直す必要がありました。新規許可が下りるまでの間は無許可の状態となるため、500万円以上の工事(建築一式は1,500万円以上)を受注できないという大きな空白期間が生じていました。これは事業継続にとって深刻なリスクでした。
令和2年改正で何が変わったか
令和2年10月1日の建設業法改正により、第2章に「第4節:承継」が新設されました。第17条の3では、個人事業主である建設業者が死亡した場合の相続による許可の承継(認可制度)が規定されています。この制度を利用することで、相続人は被相続人の建設業許可を引き継ぐことが可能になります。許可番号・経営事項審査(経審)の結果・監督処分を含む権利・義務の総体が承継されます。なお、刑事罰(建設業法第45条〜第55条)は個人に帰属するものであり、承継されません。
申請のルール:死亡後30日以内が期限
相続による認可の申請には、厳格な期限が定められています。被相続人の死亡後30日以内に認可申請を行わなければなりません(申請の受理まで完了していることが必要です)。この期限を過ぎると制度の適用を受けられず、許可は失効します。
申請先は以下のとおりです。
- 被相続人が国土交通大臣許可の場合 → 国土交通大臣
- 被相続人が都道府県知事許可の場合 → 当該都道府県知事(相続人が大臣許可または他の都道府県知事許可を受けている場合は国土交通大臣)
なお、相続しない場合や全業種の承継が不可能な場合は、廃業届の提出が必要です。
認可申請中は工事を続けられる
認可の申請が受理されると、処分(認可または不認可の通知)があるまでの間、相続人は被相続人の建設業許可を受けたものとして扱われます。申請中に従前の許可の有効期限を迎えても許可の効力は切れません。また、認可後の許可有効期間は、承継の日の翌日から5年間として起算されます。
相続人は許可要件を満たす必要がある
認可を受けるためには、相続人自身が建設業許可の要件を満たしていることが前提となります。具体的には、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の要件と専任技術者の要件が審査されます。これらを満たさない場合は認可されないため、後継者の育成や資格取得を早い段階から検討しておくことが重要です。
相続人が複数いる場合
相続人が2人以上いる場合には、全員の同意により、建設業を承継する相続人を1名選定する必要があります。その選定された者が認可申請を行い、許可の引き継ぎを受けます。
制度の対象外となるケース
以下のケースでは、この相続による承継制度は利用できません。
- 被相続人が一般建設業許可を持ち、相続人がその同一業種の特定建設業許可をすでに取得している場合
- 被相続人が特定建設業許可を持ち、相続人がその同一業種の一般建設業許可をすでに取得している場合
これは、同一業種について一般・特定の重複保有が認められていないためです。
まとめ
建設業許可の相続は、令和2年10月の法改正により、適切な手続きをとれば許可を途切れなく引き継ぐことが可能になりました。ただし、死亡後30日以内という期限は非常に短く、相続人自身が許可要件を満たしている必要もあります。事業を継続する意思がある場合は、事前に手続きの流れと後継者の要件を確認しておくことが重要です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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