
マンションやビルに設置されたエレベーターは、定期的なメンテナンスや部品交換が不可欠です。しかし、「その作業は建設工事に該当するのか」「建設業許可が必要なのか」という点については、実務上の判断が難しいケースも少なくありません。今回は、建設業法の観点からエレベーターの部品交換と建設工事の関係を整理します。
建設業法における「建設工事」とは
建設業法第2条第1項では、「建設工事」とは「土木建築に関する工事で別表第1の上欄に掲げるものをいう」と定められています。また同条第2項で「建設業」とは「建設工事の完成を請け負う営業」とされており、この「完成を請け負う」という点が重要なポイントです。
エレベーター工事と機械器具設置工事業
建設業法上の29業種には「エレベーター工事業」という独立した区分は存在しません。エレベーターの設置工事や大規模なリニューアル工事は、「機械器具設置工事業」に分類されるのが一般的です。
機械器具設置工事とは、国土交通省の業種区分によれば「機械器具の組立て等により工作物を建設し、または工作物に機械器具を取り付ける工事」と定義されています。具体的な例示としては、プラント設備工事・運搬機器設置工事・内燃力発電設備工事・集塵機器設置工事・立体駐車設備工事などが挙げられており、「運搬機器設置工事」には昇降機設置工事(エレベーター工事)も含まれるとされています。
ただし、機械器具設置工事は、電気工事・管工事・電気通信工事・消防施設工事など他の専門工事と重複する場合があります。その場合は原則として各専門工事に区分され、いずれにも該当しない機械器具、または複合的な機械器具の設置が「機械器具設置工事」となります。
とび・土工工事業との関係
エレベーターに関する工事であっても、作業の性質によっては「とび・土工・コンクリート工事業」に区分されるケースがあります。
とび・土工・コンクリート工事の内容としては、①足場の組立て・機械器具等重量物のクレーン等による揚重運搬配置・鉄骨等の組立て、②くい打ち・くい抜き・場所打ちぐい、③土砂等の掘削・盛土・締固め、④コンクリートによる工作物の築造、⑤その他基礎的ないしは準備的工事が挙げられます。エレベーターに関連する場面では、クレーン等を用いた重量物の揚重運搬配置や、機器をコンクリートに固定するアンカー工事・ボルト止めがこれに該当します。
なお、完成した機械器具を現場に運んで置いただけでは、そもそも建設工事に当たらない場合もある点にも注意が必要です。つまり、「エレベーターに関係する工事だから全て機械器具設置工事」とは一概には言えず、作業内容ごとに該当業種が異なる点が重要です。
部品交換・保守点検は建設工事に該当するか
日常的な保守・点検の枠内で行われる消耗品交換や小規模な部品交換については、建設工事の完成を目的とする請負とは判断されない場合がほとんどです。国土交通省の「昇降機の適切な維持管理に関する指針」でも、「保守」とは清掃・注油・調整・部品交換・消耗品の補充・交換等を行うこととされており、これらは通常、建設工事の範疇外とみなされています。
ただし、材料費を含む工事金額が500万円を超える場合は、建設業許可が必要かどうかの精査が必要です。また、機械器具の組立・取り付けを伴う大掛かりな改修は、工事内容によって許可要件の対象となり得ます。
実務上の判断まとめ
エレベーターに関する工事が建設工事に該当するかどうかは、①工事の目的(維持管理か機能改変か)、②工事の金額(500万円超か否か)、③作業の内容(組立・取付を伴うか、揚重運搬・アンカー固定のみか)を総合的に検討する必要があります。
業種の区分は複雑であり、行政庁の判断や都道府県ごとの運用により結論が異なる場合もあります。実際の工事の発注・受注にあたっては、管轄の行政庁にご確認されることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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