建設業界では、元請会社と下請会社の間で多層的な請負構造が形成されることが少なくない。こうした重層的な下請体制のなかで問題となりやすいのが、偽装請負と呼ばれる契約形態である。本記事では、偽装請負の意味や判断基準、建設現場における具体的なリスクについて解説する。

偽装請負とは何か

 偽装請負とは、形式上は請負契約や業務委託契約を締結しているにもかかわらず、実態としては労働者派遣と同様の状態になっている状況を指す。請負契約においては、注文主が請負業者の労働者に対して直接指揮命令を行うことは予定されていない。業務の進め方・作業の順序・配置などは、請負業者自身が自社の労働者に指示するものとされている。

 ところが、元請会社の現場監督が下請会社の作業員に対して直接作業指示を出したり、出退勤の管理を行ったりする実態があれば、契約上の名称が「請負」であっても偽装請負と判断される可能性がある。

建設業における派遣禁止との関係

 労働者派遣法第4条は、建設業務について労働者派遣を原則として禁止している。これは、建設現場では安全衛生管理上の責任関係を明確にする必要があるためである。この派遣禁止規定の存在により、建設業では偽装請負の問題がとりわけ重要な意味を持つ。

 仮に実態が労働者派遣と評価されれば、本来禁止されている行為を行ったこととなり、法的責任が発生する。下請業者には職業安定法違反および労働者派遣法違反が問われ、元請業者もその幇助責任を問われるおそれがある。

偽装請負が起きやすい背景

 建設業における偽装請負が生じやすい背景には、重層下請構造の深化がある。大規模工事では元請・一次下請・二次下請と発注が連鎖し、末端の技能労働者が一人親方や個人事業主として請負契約を締結するケースも増えている。こうした構造のなかでは、誰が実質的な指揮命令を行っているかが不明確になりやすく、気づかないうちに偽装請負の状態となっていることがある。

偽装請負の典型的なパターン

 建設現場における典型例として、元請の現場監督が下請作業員に直接作業指示を行う場合がある。本来、施工や安全衛生に関する指示は、元請と下請の打ち合わせや安全衛生協議会を通じて伝達されるべきである。元請側が下請労働者を直接管理していれば、指揮命令関係が生じていると判断される。

 また、多層下請構造のなかで末端労働者がいずれの指揮命令下にあるか不明瞭になる使用者不明型も問題となる。この場合、労働災害が発生した際の責任の所在も曖昧となり、安全衛生上の深刻なリスクを招く。

罰則と行政処分

 偽装請負が発覚した場合、関係者には複数の法令違反が成立しうる。無許可で労働者派遣事業を行ったとして、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(労働者派遣法)の対象となる。職業安定法違反が認定されれば同様の罰則が適用され、中間搾取が認められる場合には労働基準法第6条違反として1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることもある。行政処分としては、行政指導・業務改善命令・企業名の公表なども想定され、建設業許可を有する事業者であれば、監督処分(営業停止や許可取消)につながる可能性もある。

適正な請負を維持するために

 偽装請負を防ぐためには、契約内容と現場の実態を一致させることが不可欠である。下請業者は自社の労働者に対して業務遂行方法・労働時間・配置などを自ら管理しなければならない。元請業者は施工計画・工程管理・品質管理・安全管理に実質的に関与しつつも、下請労働者への直接指揮命令は避け、指示は必ず下請業者の職長等を通じて行う運用を徹底することが求められる。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
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