建設工事をめぐるトラブルは、工事の瑕疵や請負代金の未払い、追加工事の費用負担など、多岐にわたります。いったん紛争が生じると、当事者間の関係が急速に悪化し、解決が長期化することも少なくありません。紛争発生直後の初期対応が、その後の解決の行方を大きく左右します。

まず行うべきこと:証拠の確保

 紛争が発生したと感じた段階で、最優先すべきは証拠の保全です。工事請負契約書・工事請負契約約款・設計図・注文書・請書・変更合意書などの書類は、紛争解決の最も基礎的な証拠となります。現場写真や施工記録、メール・FAX等のやり取りも、できる限り時系列でまとめて保管しておくことが重要です。

 建設業法第19条第2項は、工事内容や請負代金・工期などの法定記載事項を変更する場合、その変更内容を書面に記載し、署名または記名押印のうえ相互に交付することを義務付けています。口頭での変更合意は後の紛争の火種になりかねないため、変更事項は必ず書面で残すことが原則です。

当事者間での話し合いを試みる

 初期段階では、まず当事者間での協議・交渉を試みることが一般的です。感情的なやり取りを避け、事実関係を整理したうえで、相手方に対して書面で問い合わせや申し入れを行うことが望ましいといえます。相手方の回答も書面で求めると、後の手続きで活用できます。

専門的な紛争解決機関の活用

 当事者間での解決が難しい場合、建設工事紛争審査会の利用が有効です。建設工事紛争審査会は建設業法に基づき、国土交通省および各都道府県に設置された準司法的機関(ADR機関)です。法律・建築・土木等の専門家が公正中立の立場で関与し、あっせん・調停・仲裁の3種類の手続きにより、簡易・迅速な解決を図ります。

 取り扱う紛争は、工事の瑕疵や請負代金の未払いなど、工事請負契約の解釈または実施をめぐるものに限られます。不動産の売買に関する紛争、専ら設計に関する紛争、直接契約関係にない元請・孫請間の紛争などは対象外となる点に注意が必要です。

手続きの種類と特徴

 あっせんは、委員が当事者間の調整を行い解決を促す手続きです。調停は、委員が具体的な解決案を提示します。仲裁は、当事者間に仲裁合意がある場合に限り利用でき、仲裁判断は確定判決と同一の効力を持ちますが、不服申立てができない点に留意が必要です。

 いずれの手続きも原則として非公開で行われ、申請には申請手数料と通信運搬費の納付が必要です。

初期対応のまとめ

 紛争発生時は、①契約書等の証拠を確保する、②変更事項は必ず書面で残す、③当事者間での協議を試みる、④解決が困難な場合は建設工事紛争審査会等の専門機関に相談する、という流れが基本的な対応となります。早期に適切な対応をとることが、被害の拡大を防ぐうえで重要です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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