工事代金の未払いや施工の不具合をめぐるトラブルは、建設業の現場では珍しくありません。こうした紛争を解決する手段のひとつとして、建設業法に基づく公的機関である建設工事紛争審査会があります。本記事では、審査会の仕組みや手続きの流れについて解説します。

建設工事紛争審査会とは

 建設工事紛争審査会は、建設工事の請負契約に関する紛争を処理するための準司法的機関(ADR機関)です。建設業法第25条以下の規定に基づき、国土交通省に中央建設工事紛争審査会が、各都道府県に都道府県建設工事紛争審査会が設置されており、全国合計48か所に及びます。

 委員は、弁護士を中心とする法律の専門家のほか、建築・土木・電気・設備など各技術分野の学識経験者や建設行政の経験者によって構成されており、法律・技術の両面から紛争の解決を支援します。

審査会が取り扱う紛争の範囲

 審査会が扱うのは、建設工事の請負契約に関する紛争に限られます。主な対象としては、工事の施工に瑕疵(不具合)があるのに補修に応じてもらえない場合、請負代金が支払われない場合、工事内容や仕様をめぐって元請と下請の間で意見が対立している場合などが挙げられます。

 一方、不動産の売買に関する紛争、専ら設計・監理に関する紛争、工事に伴う近隣住民との紛争、直接の契約関係にない元請・孫請間の紛争は取り扱われません。審査会は指導監督機関や技術的な鑑定機関ではない点も押さえておく必要があります。

管轄はどこの審査会か

 どの審査会に申請するかは、許可行政庁によって原則として定められています。当事者の一方または双方が国土交通大臣の許可業者である場合、または双方が建設業者で許可した都道府県知事が異なる場合は中央建設工事紛争審査会の管轄となります。当事者の双方または一方が都道府県知事許可の建設業者である場合などは、該当する都道府県建設工事紛争審査会の管轄です。

 なお、当事者双方の合意(管轄合意)があれば、いずれの審査会へも申請することができます。

紛争処理の3つの手続き

 審査会では、あっせん・調停・仲裁の3種類の手続きが用意されています。

 あっせんは、担当委員が当事者の間に入り、話し合いによる自主的な解決を促す手続きです。強制力はなく、比較的簡易な紛争に向いています。

 調停は、あっせんより踏み込んだ形で、委員が具体的な解決案を提示し、当事者の合意形成を支援します。あっせん同様、当事者の合意が必要です。

 仲裁は、あらかじめ当事者間に仲裁合意が必要となりますが、委員が下した仲裁判断は確定判決と同一の効力を持ち、最終的な解決手段となります。仲裁の申請には時効中断効が認められています。なお、あっせん・調停についても、建設業法第25条の16により、打切通知を受けた日から1か月以内に訴えを提起した場合は、あっせん・調停の申請時に時効が中断したものとみなされます。いずれの手続きも、原則として非公開で行われます。

申請の流れと費用

 申請に必要な主な書類は、申請書・工事請負契約書などの証拠書類・法人の登記事項証明書・委任状(代理人を立てる場合)などです。仲裁の申請には別途仲裁合意書も必要となります。

 費用としては、申請手数料(請求価額に応じて異なる)と通信運搬費の予納が必要です。申請手数料は、原則として手続きを取り下げた場合でも返還されないため、申請前に十分な準備が求められます。詳細な申請方法や管轄の確認については、各審査会の事務局または中央建設工事紛争審査会(国土交通省)に事前に問い合わせることが推奨されます。

まとめ

 建設工事紛争審査会は、技術・法律の両面の専門家が関与する公的ADR機関として、訴訟よりも迅速・低コストで解決を目指せる点が特徴です。契約締結段階から審査会の管轄や仲裁合意の有無を意識しておくことが、万一の紛争発生時に備えるうえで重要です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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