建設工事は、社会インフラを支える極めて重要な営みです。工事の品質や安全性が損なわれれば、発注者や利用者だけでなく、広く社会全体に影響が及びます。そのため建設業法は、適正な施工を確保するための仕組みを体系的に定めています。その中でも、第四章「施工技術の確保」は、建設業者・技術者・国それぞれに対して、施工技術の維持・向上に関する責務を課した重要な章です。

施工技術の確保に関する責務規定(第25条の27)

 建設業法第25条の27は、施工技術の確保に関し、三者それぞれの役割を明確に定めています。

 まず建設業者は、「建設工事の担い手の育成及び確保その他の施工技術の確保に努めなければならない」とされています(第1項)。将来の建設現場を支える人材を育て、確保することが、建設業者の努力義務として明示されています。

 次に建設工事に従事する者(技術者・技能者)は、「建設工事を適正に実施するために必要な知識及び技術又は技能の向上に努めなければならない」とされています(第3項)。現場で働くすべての者が、自らの技術水準を高めていく姿勢を持つことが求められています。

 そして国土交通大臣は、施工技術の確保および知識・技術・技能の向上に資するため、必要に応じて講習や調査の実施・資料の提供その他の措置を講ずるものとされています(第4項)。国が積極的に技術水準の底上げを支援する役割を担うことが規定されています。

 この規定はいずれも「努力義務」として定められており、違反した場合に直接的な罰則が科されるものではありません。しかし建設業者の社会的使命を法的に明確にした条文として、重要な意味を持っています。

令和6年改正で新設された「処遇確保」の義務(第2項)

 令和6年12月施行の改正建設業法により、第25条の27に第2項が新設されました。これにより建設業者は、「その労働者が有する知識、技能その他の能力についての公正な評価に基づく適正な賃金の支払その他の労働者の適切な処遇を確保するための措置を効果的に実施するよう努めなければならない」とされています。

 従来、処遇改善の取り組みは建設業者の自主的判断に委ねられていた面がありましたが、今回の改正でこれが法的な努力義務として明文化されました。技能の向上が賃金や評価に正当に反映される仕組みを整えることが、業界の魅力向上と人材確保の両立につながるという考え方が、法律上に位置づけられた形です。

 なお、この措置の実施状況については国が調査・公表を行うとともに、中央建設業審議会への報告が義務づけられています(建設業法第40条の4)。単なる努力規定にとどまらず、国による実態把握と透明性確保の仕組みが設けられている点にも注目が必要です。

人材確保と施工技術の持続的向上に向けて

 建設業界は現在、深刻な人手不足と技術者の高齢化という課題に直面しています。熟練した職人や技術者が引退していく一方で、若年層の入職者数は伸び悩んでいます。こうした状況が放置されれば、施工品質の低下や工事事故のリスクが高まり、最終的には発注者・利用者の不利益につながります。

 建設業者には、技術の継承を単なる社内問題としてではなく、業界全体・社会全体の課題として捉える視点が求められています。

主任技術者・監理技術者制度との関係

 施工技術の確保は、現場配置技術者の制度とも密接に関連しています。建設業者は工事を施工する際、主任技術者(または一定規模以上では監理技術者)を工事現場に置く義務があります(建設業法第26条)。

 これらの技術者は、施工計画の作成・工程管理・品質確保・現場従事者への技術的指導監督といった業務を誠実に行わなければなりません。こうした制度が適切に機能するためには、前提として十分な技術力を持つ人材が育成・確保されていることが不可欠です。第25条の27の責務は、主任技術者・監理技術者制度の根幹を支えるものでもあります。

 建設業法が求める施工技術の確保は、建設業者・技術者・国の三者が連携して取り組むべきテーマです。自社の人材育成や処遇改善の取り組みを見直す契機として、この規定の内容を改めて確認しておくことが重要です。具体的な対応については、管轄の行政庁や専門家に相談されることをお勧めします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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