
建設工事の契約方式には、工事ごとに請負金額を確定させる「総価契約」のほかに、単位数量あたりの価格だけをあらかじめ決めておき、実際の施工数量に応じて最終的な請負金額を算定する「単価契約」という方式があります。維持補修工事や緊急対応工事など、施工前に数量を確定しにくい工事で広く活用されている方式です。
単価契約も建設工事の請負契約とみなされる
単価契約であっても、実質的に報酬を得て建設工事の完成を目的として締結された契約であれば、建設業法第24条の規定により建設工事の請負契約とみなされます。契約の名称や形式にかかわらず、書面交付義務・一括下請負禁止・技術者配置義務など、建設業法上の義務がすべて適用される点に注意が必要です。
請負金額は全体の合計額で判断される
単価契約で特に注意が必要なのは、建設業許可の要否を判断する際の請負金額の合算です。単価契約方式では個々の施工単位ごとの金額は小さくなりがちですが、建設業法施行令第1条の2第2項の規定により、同一工事として位置づけられる場合は全体の請負金額を合算して判断されます。
たとえば、1日あたり150万円の単価契約で4日間施工すれば合計600万円となり、建設業許可が必要な工事に該当します。個々の施工単位が軽微に見えても、全体で500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)になれば許可が必要です。許可の有無を誤って判断した場合、無許可営業として建設業法違反となるリスクがあります。
偽装請負に該当しないための注意点
単価契約には偽装請負のリスクも伴います。「1箇所○万円」「1㎡○万円」のように工事の完成を目的とした単価設定であれば適正な請負契約ですが、「作業員1名につき○万円」のように労働力の提供を単価とする契約は、実態が労働者派遣とみなされる可能性があります。この場合、労働者派遣法上の問題が生じ得るため、単価の設定方法には十分な注意が必要です。
書面による契約締結の義務(建設業法第19条)
建設業法第19条では、請負契約の当事者間で工事内容・請負代金額・工期その他所定の事項を記載した書面を相互に交付することを義務づけています。単価契約を用いる場合は、基本契約書または基本契約約款を作成したうえで、個々の発注を注文書・請書によって行う方式が実務上広く採用されています。基本契約書には単価・支払条件・数量変更時の対応などを明確に定めておくことが重要です。
まとめ
単価契約方式は柔軟性が高い一方で、許可要否の判断・偽装請負への該当性・書面作成義務(建設業法第19条)など、複数の法令上の論点が交差する契約形態です。個々の施工単位の金額が小さくても全体で許可が必要になること、労務単価による契約が偽装請負と判断されるリスクがあることを正確に理解したうえで、適切に運用することが求められます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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