
建設工事において、元請負人が下請負人へ代金を振り込む際、送金(振込)手数料を下請代金から差し引いて支払うケースが見られます。こうした行為は「赤伝処理」の一類型として、建設業法上の問題になる可能性があります。元請・下請間の適正な取引を確保するうえで、正しく理解しておくことが重要です。
赤伝処理とは何か
赤伝処理とは、元請負人が下請代金の支払い時に、各種費用を差し引いて(相殺して)支払う行為の総称です。差し引きの対象となる費用の主な例としては、①安全衛生保護具等の費用、②振込手数料などの下請代金支払いに関わる諸費用、③建設廃棄物の処理費用、④駐車場代・安全協力会費などその他の諸費用が挙げられます。
建設業法上の問題点
赤伝処理そのものが直ちに建設業法に違反するわけではありません。しかし問題となるのは、元請負人と下請負人の間で事前に合意がない場合、合意があっても差し引く根拠が不明確な場合、あるいは実際にかかった費用よりも多い額を差し引く場合です。
国土交通省の「元請負人と下請負人間における建設業法令遵守ガイドライン(第12版)」では、こうした一方的な赤伝処理は、建設工事請負契約の原則を定めた建設業法第18条の趣旨に反し、情状によっては同法第28条第1項第2号に定める「請負契約に関し不誠実な行為」に該当するおそれがあると明記されています。
さらに、赤伝処理の結果、下請代金の額が「通常必要と認められる原価」を下回る場合には、元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3「不当に低い請負代金の禁止」に違反するおそれがあります。
振込手数料の差し引きについて
振込手数料を差し引く行為も赤伝処理の一類型です。これを適正に行うためには、①差し引く費用の種類・金額・根拠を書面で明示すること、②契約締結前に下請負人と協議し合意を得ること、③実際にかかった費用の実費のみを差し引くこと、の3点が必要です。事前の合意なしに元請が一方的に差し引くことは認められません。
下請法(取適法)との関係
建設工事の請負取引は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の適用対象外とされており(同法第2条第4項)、2026年1月1日に施行された後継法の取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)においても引き続き適用対象外とされています。ただし、建設業者が設計業務・工事監理業務などを別途委託する場合には取適法が適用される可能性があるため、取引の性質に応じた確認が必要です。
実務上の対応ポイント
元請負人としては、振込手数料を下請代金から差し引く場合は、契約書または特記仕様書等に差し引く費用・金額・根拠を明示し、下請負人の同意を得たうえで行うことが求められます。また、差し引いた後の金額が原価を下回らないかについても確認することが重要です。一方的・不透明な赤伝処理は、行政指導や営業停止処分につながるリスクもあることを念頭に置いてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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