建設工事の現場では、「施工体制台帳」と「作業員名簿」という2種類の重要な書類の作成が求められます。これらは単なる内部資料ではなく、建設業法に基づく法的義務を伴う書類です。特に令和7年2月1日の施行令改正により金額要件が変更されましたので、最新の基準を正確に把握しておくことが重要です。

施工体制台帳とは

 施工体制台帳は、建設業法第24条の8に基づき、特定建設業者が発注者から直接工事を請け負った場合に作成が義務付けられる書類です。工事に関わるすべての下請業者の商号・名称、請け負った工事の内容・工期、技術者の配置状況などを一元的に記録し、施工体制の全体像を明らかにすることを目的としています。

 作成義務が生じる要件は工事の種別により異なります。民間工事の場合は、下請契約の請負代金の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になるときに作成義務が生じます。この金額は令和7年2月1日の施行令改正により引き上げられたものです。一方、公共工事については、入札契約適正化法第15条の規定により、下請契約を締結するすべての工事で金額にかかわらず作成が義務付けられています。

 作成した台帳は工事現場ごとに備え置くとともに、発注者から請求があった場合には閲覧に供しなければなりません。また、工事完了後も帳簿の添付書類として5年間の保存が義務付けられています(新築住宅工事に係るものは10年間)。

作業員名簿とは

 作業員名簿は、建設工事に従事するすべての作業員の情報を記録する書類で、建設業法施行規則に基づき、施工体制台帳の一部として添付が義務付けられています。令和2年10月1日の建設業法改正により、それまで任意であった作業員名簿の作成・添付が実質的に義務化されました。

 建設業法施行規則で記載が求められる主な事項は以下のとおりです。①氏名・生年月日・年齢・職種、②健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入状況、③中小企業退職金共済制度の被共済者に該当するか否か、④安全衛生に関する教育の受講状況とその内容、⑤建設工事に係る資格・技能・技術に関する資格、以上が法定記載事項となっています。

 これらの情報を記録することで、社会保険加入状況の確認や安全衛生管理の実態把握が可能になります。なお、建設キャリアアップシステム(CCUS)から出力される様式も、建設業法施行規則に適合するものとして使用できます。

作成・管理における注意点

 施工体制台帳の作成義務を負うのは元請の特定建設業者ですが、各下請負人の協力なしには適正な台帳を作成できません。下請負人は、さらに他の業者に工事を請け負わせた場合、「再下請負通知書」を元請業者に提出する義務を負います。また、作業員名簿は各社が自社分を作成し、1次下請業者がまとめて元請に提出するのが一般的な実務運用です。

 これらの書類を適切に作成・管理することは、法令遵守にとどまらず、多重下請構造の透明性確保や労務管理の適正化にもつながります。建設業に携わる事業者として、最新の法令基準を踏まえた書類管理体制を整えておくことが求められます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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