建設業を営む上で、建設業法が定める罰則規定を正しく理解しておくことは不可欠です。違反が発覚した場合、経営者個人だけでなく法人に対しても刑事罰が科される可能性があります。本記事では、建設業法に定められた主な罰則規定を5つのカテゴリに整理して解説します。

1. 最も重い罰則:無許可営業・不正許可取得など(第47条)

 建設業法第47条は、建設業法の中で最も刑罰が重い罰則規定です。以下のいずれかに該当する場合に適用されます。

対象となる主な違反行為

 許可を受けずに建設業を営んだ場合が典型例です。このほか、特定建設業の許可なしに下請発注金額の上限(第16条)を超えて下請契約を締結した場合、営業停止処分や営業禁止処分に違反して営業を継続した場合、虚偽・不正の事実に基づいて許可や認可を受けた場合なども含まれます。

 これらに該当すると、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されます。情状によっては、拘禁刑と罰金が併せて科される場合もあります。なお、令和7年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」は「拘禁刑」に改められています。

2. 秘密保持義務違反(第48条)

 建設業法第48条は、指定機関の役職員による秘密保持義務違反に対する罰則を定めています。登録経営状況分析機関や建設業者団体の役職員などが、その業務上知り得た秘密を漏らした場合などが対象です。

 違反者には1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。第47条に次ぐ重さの罰則であり、業務上の守秘義務が厳格に求められることを示しています。

3. 虚偽申請・変更届の未提出など(第50条)

 建設業法第50条は、許可申請や各種届出における虚偽・不正に対する罰則です。対象となる行為は、許可申請書やその添付書類への虚偽記載、変更届の未提出または虚偽提出、経営事項審査の書類への虚偽記載などです。

 これらに該当すると、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。「変更届はあとで出せばいい」という認識は通用せず、期限内の正確な届出が義務付けられています。

4. 技術者の未配置・立入検査拒否など(第52条)

 建設業法第52条は、現場への技術者配置義務違反や行政の立入検査に対する妨害などを対象とした罰則です。主任技術者または監理技術者を配置しなかった場合、一式工事における専門技術者を配置しなかった場合、立入検査の報告を怠ったまたは虚偽報告した場合、立入検査を拒否・妨害した場合などが該当します。

 これらに該当すると100万円以下の罰金が科されます。自由刑(拘禁刑)は設けられていませんが、許可の取消しや営業停止といった行政処分につながるリスクもあり、実務上の打撃は小さくありません。

5. 両罰規定:法人に対する罰則(第53条)

 建設業法第53条は、いわゆる「両罰規定」です。代表者や従業員等が違反行為を行った場合、その行為者が罰せられるだけでなく、法人に対しても罰金刑が科されます。

 特に注目すべきは第47条違反の場合で、法人に対して1億円以下の罰金が科されます。行為者への罰則(300万円以下の罰金)をはるかに上回る水準であり、法人規模の大小を問わず、組織全体でのコンプライアンス体制の整備が強く求められます。第50条・第52条違反の場合は、各本条の罰金額が法人にも適用されます。

まとめ

 建設業法の罰則規定は、単に違法行為に対するペナルティにとどまらず、許可の取消しや営業停止といった行政処分にもつながる可能性があります。日常的な法令遵守が、安定した事業継続の基盤となります。無許可営業や虚偽申請はもちろん、変更届の遅延や技術者の未配置といった形式的な違反も見逃さず、社内体制の点検を定期的に行うことが重要です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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