建設業法第26条第3項では、請負金額が一定額以上の工事については、主任技術者または監理技術者を工事現場ごとに専任で配置することが義務付けられています。これは、適正な施工管理を確保するための重要なルールです。

 しかし、技術者不足が深刻化する建設業界において、この専任義務が人材活用の制約となっていることも事実でした。そこで令和6年12月13日に施行された改正建設業法では、情報通信機器を活用することを条件に、技術者が複数の工事現場を兼任できる新制度「専任特例1号」が創設されました(建設業法第26条第3項第1号・第4項)。

専任特例1号の概要

 この制度は、主任技術者・監理技術者のどちらにも適用可能です。一定の要件をすべて満たすことで、原則として専任が必要な工事現場に従事しながら、もう一つの現場も兼任することができます。

兼任のための8つの要件

 専任特例1号を活用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

 ① 請負金額の上限 兼任できる各工事の請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であること(建設業法第26条第3項第1号イ・施行令第28条)。なお、工事途中で上限額を超えた場合は、その時点以降は専任特例を活用できず、改めて専任の技術者を配置しなければなりません。

 ② 兼任できる工事現場数 同一の技術者が兼任できるのは2工事現場以下(施行令第30条)。

 ③ 工事現場間の距離 兼任する各現場が1日で巡回可能であり、かつ片道おおむね2時間以内の移動距離であること(施行規則第17条の2第1号)。

 ④ 下請次数 下請契約は3次までに限られます(施行規則第17条の2第2号)。途中で3次を超えた場合も、以降は専任配置に戻る必要があります。

 ⑤ 連絡員の配置 各工事現場に連絡員を置くこと(施行規則第17条の2第3号)。連絡員には主任技術者(営業所技術者)と同等の実務経験が必要です。土木一式工事・建築一式工事の場合はさらに当該工事に関する実務経験1年以上の者であることが求められます。連絡員に専任・常駐は必要なく、複数現場の兼務も可能です。

 ⑥ 施工体制を確認するICT措置 現場作業員の入退場を遠隔から確認できるシステムを導入すること(施行規則第17条の2第4号)。建設キャリアアップシステム(CCUS)またはCCUSとAPI連携したシステムの活用が望ましいとされています。

 ⑦ 人員配置計画書の作成・保存 各現場の請負代金・下請契約の状況・連絡員情報などを記載した人員の配置計画書を工事現場に備え置き、帳簿の保存期間と同じ期間、営業所でも保存すること(施行規則第17条の2第5号)。

 ⑧ 情報通信機器の設置 技術者が現場以外の場所から映像・音声の双方向通信が可能な機器(スマートフォン・タブレット・Web会議システムなど)が現場に設置され、通信できる環境が整備されていること(施行規則第17条の3)。山間部など通信が不安定な環境は要件を満たさない場合があります。

注意すべきポイント

 専任特例1号と専任特例2号(監理技術者補佐による兼任)を、同一の技術者が同時に活用することはできません。現場の標識についても、専任特例1号を適用している場合は「専任の有無」欄への所定の記載が必要です。

まとめ

 「専任特例1号」は、情報通信機器の活用を前提とした、建設業界の生産性向上と技術者の有効活用を目的とした新制度です。要件は複数ありますが、ICT環境を整備し適切に運用することで、限られた技術者人材をより柔軟に活かすことが可能になります。制度の詳細については、国土交通省が公表している「監理技術者制度運用マニュアル」もあわせてご確認ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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