
書面主義が原則
建設工事の請負契約は、建設業法第19条第1項により、工事内容や請負代金の額など法定15項目を記載した書面を作成し、署名または記名押印のうえ相互に交付することが義務付けられています。これが建設業における「書面主義」の原則です。
電子契約を認める根拠条文
しかし現在は、紙の契約書に代わる手段として電子契約(電磁的措置)が法律上認められています。根拠は建設業法第19条第3項です。同項は、「契約の相手方の承諾を得て、国土交通省令で定める措置を講じた場合は、書面交付の規定による措置を講じたものとみなす」と定めており、一定の要件を満たせば電子契約が適法であることを明確にしています。
3つの技術的基準(施行規則第13条の4)
この「国土交通省令で定める措置」の具体的な内容を示しているのが、建設業法施行規則第13条の4第2項です。同規定は電子契約が満たすべき技術的基準として、以下の3要件を定めています。
第1の要件:見読性
電子化された契約事項のファイルを、相手方が出力して書面として作成できる状態にしておく必要があります。記録がいつでも速やかかつ整然と表示・出力できるよう、システム側で適切に整備しておくことが求められます。
第2の要件:原本性
ファイルに記録された契約事項について、改変が行われていないかどうかを確認できる措置を講じていなければなりません。電子署名やタイムスタンプの活用が代表的な手段です。
第3の要件:本人性
契約の相手方が本人であることを確認できる措置を講じる必要があります。この要件は2020年10月1日施行の建設業法施行規則改正により追加されたもので、従来の2要件に加えられた重要な基準です。
相手方の事前承諾が必要
電子契約を導入する前提として、相手方の「事前承諾」が必要です。建設業法施行令第5条の5および施行規則第13条の5・第13条の6は、電子契約の方法・ファイルの形式・使用するシステムなどを相手方に示し、承諾を得るよう義務付けています。承諾なく電子契約を進めることは認められません。
2025年9月:国交省ガイドラインが24年ぶりに刷新
国土交通省は2025年9月30日付で電子契約に関するガイドラインを全面刷新しました。新ガイドライン「電磁的措置による建設工事の請負契約の締結に係るガイドライン」では、従来は適法性が不明確であった「立会人型(事業者署名型)」電子署名について初めて明確な位置付けがなされ、多くの企業が利用するクラウド型電子契約サービスが正式に認められました。
まとめ
施行規則第13条の4が定める見読性・原本性・本人性の3要件は、旧・新ガイドラインを通じて変わらない基本的な基準です。電子契約の導入にあたっては、利用するサービスがこの3要件を満たしているかを必ず確認することが求められます。電子契約の活用は契約手続きの効率化・印紙税の節約・書類保管コストの削減など多くのメリットをもたらしますが、相手方の承諾取得や技術的基準への適合を怠ると建設業法違反となるリスクもあります。適切な手続きのもとで導入を進めることが重要です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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