建設工事では、受注した業者が倒産や経営上の問題で施工を継続できなくなるリスクがあります。そうした事態が起きたとき、発注者(注文者)はすでに支払った前払金を回収できなくなったり、工事が中途半端な状態で止まってしまったりする可能性があります。こうしたリスクに備えるための制度が「工事完成保証」です。建設業法第21条は、前払金を伴う工事請負契約における保証について定めており、発注者を守るための重要な規定となっています。

建設業法第21条の規定内容

 建設業法第21条第1項は、請負代金の全部または一部の前金払いを定めた工事請負契約においては、注文者は建設業者に対して前金払いをする前に保証人を立てることを請求できると定めています。ただし、公共工事の前払金保証事業に関する法律に規定する保証事業会社の保証が付いている工事や、政令で定める軽微な工事については、この請求はできません。あくまで民間工事で前払金を支払う場面を主な対象とした規定です。

保証人の種類は2つ

 保証人の請求を受けた建設業者は、次の2種類のいずれかを用意しなければなりません。一つ目は、債務不履行の場合における遅延利息・違約金・その他の損害金の支払いを保証する保証人です。二つ目は、建設業者に代わって自らその工事を完成することを保証する他の建設業者です。後者はいわゆる「工事完成保証人」と呼ばれ、元の業者が施工できなくなった場合に代わりに工事を引き継ぐ役割を担います。

保証人を立てない場合の取り扱い

 建設業者が保証人を立てることを請求されたにもかかわらず、これを立てなかった場合、注文者は契約の定めにかかわらず前金払いをしないことができます(建設業法第21条第3項)。つまり、保証人がいない限り前払金の支払い自体を拒否できるという規定であり、注文者にとっての重要な防衛手段となっています。保証人の不在は前払金支払い義務の停止につながるため、建設業者側も軽視できない問題です。

公共工事と前払金保証制度の関係

 公共工事の場合は、別途「公共工事の前払金保証事業に関する法律」に基づく仕組みが整備されています。受注した建設業者は東日本建設業保証株式会社などの保証事業会社と契約を結び、前払金保証書を発注者に提出することで前払金を受け取ります。この制度が適用される工事については建設業法第21条の保証人請求の対象外となっており、公共工事と民間工事では保証の仕組みが異なる点に注意が必要です。

民間住宅工事における完成保証制度

 民間の住宅工事分野でも、工事完成保証に相当する制度が存在します。住宅保証機構などが提供する「住宅完成保証制度」は、施工業者が倒産等により工事を継続できなくなった場合に、代替業者が引き継いで完成させるための増嵩工事費用や前払金の返還不能損害を補填する仕組みです。発注者である施主を守るセーフティネットとして機能しており、建設業法第21条の趣旨と方向性を同じくする制度といえます。

まとめ

 工事完成保証は、前払金を支払った発注者が工事中断リスクから守られるための重要な制度です。建設業法第21条が定める保証人の仕組みを正確に理解し、公共工事・民間工事それぞれの保証制度の違いを把握しておくことが、トラブル防止の第一歩となります。前払金を伴う工事を行う際は、保証の手続きを事前に確認しておくようにしましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

行政書士吉田哲朗事務所にお任せ下さい。
個人事業主、法人のお客様問わず、たくさんのお問合せを頂いております。
専任技術者要件の10年以上の証明の実績多数
経営業務の管理責任者

建設業29業種に対応
金看板取最短3日で申請!

投稿者プロフィール

吉田哲朗
吉田哲朗