建設業許可を取得・維持するためには、経営業務の管理責任者(以下「経管」)が主たる営業所に常勤していることが必要です。建設業許可事務ガイドラインでは、この「常勤」を「本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している」状態と定義しています。個人事業主の場合、経管は原則として本人または支配人のうちの1名が該当します。

個人事業主の常勤性はどのように確認されるか

 法人の場合、常勤性の確認には健康保険被保険者証や標準報酬決定通知書などが用いられます。一方、個人事業主の場合は、社会保険ではなく国民健康保険に加入しているケースが多いため、確定申告書(第一表・第二表)が常勤性の主要な確認資料として活用されます。行政庁は、申告書の内容から事業の実態・継続性・専属性を総合的に判断します。

給与所得があると常勤性が否定される理由

 確定申告書の第一表に給与所得の記載がある場合、他の会社から給料を受け取っていることを意味します。これは、その会社に雇用されている、すなわち他所に常勤している可能性が高いと判断される根拠となります。建設業許可における常勤は、他の会社に常勤できないという意味で専属性を要する概念であり、他社から給与を受けながら自身の建設業にも常勤しているという状態は、原則として認められません。

経営経験の年数にも影響する

 給与所得の問題は、現在の常勤性の証明だけでなく、過去の経営経験年数の算定にも影響します。経管として認められるには5年以上の建設業に関する経営経験が必要ですが、給与所得が記載されている年度については、建設業を「副業」として営んでいたとみなされ、その期間が経営経験年数にカウントされないケースがあります。たとえば5年間個人事業主として活動していても、そのうち3年間は給与所得があった場合、経営経験として認められるのは残りの2年間のみとなる可能性があります。

例外的な取り扱いの可能性

 給与所得があれば一律に常勤性が否定されるわけではなく、行政庁によっては個別相談に応じている場合もあります。たとえば、家族が経営する法人から専従者的な性格の給与を受けている場合や、給与所得の金額・内容から建設業への専属性が明らかに担保されている場合など、実態に応じた柔軟な判断が行われることもあります。ただし、こうした例外的な取り扱いは申請先の行政庁ごとに異なるため、事前に確認することが不可欠です。

確認書類の整備と事前相談が重要

 個人事業主が建設業許可を申請する際には、確定申告書の内容が常勤性と経営経験の両方の判断材料として精査されます。給与所得の有無に限らず、事業所得の規模や業種区分が建設業として明確に記載されているかどうかも確認されます。申請前に、担当行政庁の手引きや申請窓口への事前相談を行い、自身の申告内容がどのように判断されるかを把握しておくことが重要です。

まとめ

 個人事業主の経管に給与所得がある場合、主たる営業所への常勤性が否定される可能性があり、経営経験年数のカウントにも支障が生じることがあります。これは建設業許可の取得・維持に直結する重要な問題です。自身の確定申告書の内容と申請先の審査基準をあらかじめ照らし合わせ、必要に応じて専門家に相談しながら準備を進めることをお勧めします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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