建設業法に違反した建設業者は、許可行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)から監督処分を受けることがあります。監督処分には重さの段階があり、軽いほうから順に「指示処分」「営業の停止」「許可の取消し」の3種類が定められています。このうち、建設業者がとくに混同しやすいのが「営業の停止」と「営業の禁止」です。この2つは名称こそ似ていますが、処分の対象者・根拠条文・禁止の内容がまったく異なります。正しく理解しておくことが、リスク管理の第一歩です。

営業の停止とは(建設業法第28条)

 「営業の停止」は、建設業者(会社または個人事業主)そのものに対して下される処分です。根拠となるのは建設業法第28条第3項・第5項であり、国土交通大臣または都道府県知事が、1年以内の期間を定めて営業活動の全部または一部を停止するよう命じます。違反の態様によって30日・60日・90日など処分期間が変わり、悪質な場合には最長1年となることもあります。

 営業停止の原因となる主な行為としては、建設業法違反(一括下請負禁止違反など)や独占禁止法・刑法等への違反が挙げられます。通常は先に「指示処分」が行われ、それに従わない場合に営業の停止へと移行しますが、独占禁止法違反や刑事事件に該当するような重大な違反については、指示処分を経ずに直接営業停止が命じられる場合もあります。

 営業停止期間中は、新たな請負契約の締結や入札への参加、見積書の提出などの営業行為が禁止されます。ただし、停止命令を受ける前にすでに締結されていた工事請負契約については、引き続き施工することが可能です。取引先や金融機関への信用面での打撃も大きく、企業経営に深刻な影響を与えます。

営業の禁止とは(建設業法第29条の4)

 「営業の禁止」は、建設業者本体ではなく、その役員等や責任ある使用人個人に対して科される処分です。根拠となるのは建設業法第29条の4です。この処分が設けられた理由は明確で、会社が営業停止や許可取消を受けても、その責任ある役員が他の会社に移って同じ営業を続けられるようでは、監督処分の実効性が保てないからです。

 第29条の4には2つのパターンがあります。まず第1項は、営業停止処分が下された場合に、その法人の役員等や処分の原因事実について相当の責任を有する政令で定める使用人(処分日前60日以内にその地位にあった者を含む)に対し、営業停止期間と同一の期間、新たに営業を開始することを禁止するものです。他の建設業者の役員等になることも禁止されます。

 次に第2項は、①不正の手段による許可取得(第29条第1項第5号)、または②違反の情状が特に重いと判断された場合や営業停止処分に違反した場合の許可取消し(同第6号)を理由として許可が取り消されたときに適用されます。この場合は、役員等および相当の責任を有する使用人に対して、取消しに係る建設業について5年間、新たに営業を開始することが禁止されます。なお、軽微な建設工事のみを請け負う場合はこの禁止の対象から除かれています。

両者の違いを整理する

 「営業の停止」と「営業の禁止」の最大の違いは、処分の名宛人(対象者)にあります。営業の停止は建設業者(事業者)に対する処分ですが、営業の禁止は役員・使用人という個人に対して課されます。また、禁止期間も異なり、営業の停止は最長1年であるのに対し、許可取消しに伴う営業の禁止は5年間という長期にわたります。さらに重要な点として、営業の禁止を受けた個人は建設業許可の欠格要件(第8条第6号)に該当するため、自ら新たに許可を取得することができなくなるほか、その者が役員等に就いている法人も許可を受けられなくなります(同第12号)。処分は会社単位にとどまらず、個人レベルにまで及ぶという点が、「営業の禁止」の最も重要な特徴です。

処分を避けるために事業者が取るべき姿勢

 監督処分はいずれも、建設業法や関連法令の遵守を怠ったことが引き金となります。日常的に技術者の配置状況・社会保険の加入状況・下請契約の適法性を点検し、行政から指示があった場合には速やかに是正対応を行うことが重要です。また、処分を受けた場合でも、是正完了の報告や再発防止体制の構築によって、処分期間の軽減が考慮されることがある点も押さえておきましょう。具体的な状況については、各許可行政庁または専門家に確認することをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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