
建設業許可を取得するにあたって、国家資格を持たない方が営業所技術者等(旧:専任技術者)の要件を実務経験で満たす場合、実務経験証明書(様式第九号)の提出が必要となります。この書類は単に経験年数を書けばよいものではなく、どのような工事に携わったかという内容の具体性が審査において重視されます。工事の種類が不明確であったり、実務として認められない業務が記載されていたりすると、要件を満たしていても許可が下りないケースがあります。記載内容の精度が許可取得の可否を左右する、非常に重要な書類であるという認識が必要です。
「実務経験の内容」欄に何を書くか
実務経験証明書の中核となるのが、実務経験の内容を記載する欄です。ここには、使用期間中に現場監督技術者・設計技術者・見習い等として携わった工事名を、原則として1行に1件ずつ記入します。重要なのは、申請する業種に対応した工事の種類が判断できるよう、具体的な工事内容を記載することです。「建築工事一式」や「リフォーム」といった漠然とした表現では、何の業種の実務経験であるか判別できず、審査で問題となる可能性があります。
業種別の具体的な記載例
申請する業種に応じて、工事内容の記載には具体性が求められます。大工工事であれば「木造建築物の骨組み・床組・屋根組の施工」「建具取付工事」、電気工事であれば「ビル付帯の照明設備・幹線設備の設計および施工管理」、管工事であれば「給排水設備の配管工事」「空調機器の設置工事」といったように、業種に対応した具体的な作業内容がわかる表現で記載することが求められます。また、内装仕上工事の場合は「壁紙張替え工事・天井ボード施工」のように工種を明示するとよいでしょう。なお、単純な雑務のみに従事した工事は実務経験として計上できません。
「技術的な実務」であることを示す書き方
実務経験として認められるのは、あくまでも技術者としての立場で工事に従事した経験です。「工事に関する管理業務を行った」「顧客との打ち合わせを担当した」といった記載は、技術的な実務であることが伝わりにくく、審査において不利になる場合があります。職名欄には「工事主任」「工事係長」など、現場の技術者としての職名を記入するとともに、工事内容欄においても施工・施工管理・設計等の技術的関与が読み取れる表現を選ぶことが大切です。
裏付け資料との整合性に注意する
実務経験証明書は、工事の内容を裏付ける資料(注文書・請負契約書・請求書と入金通帳の組み合わせなど)とセットで提出することが前提です。証明書に記載した工事名・工事内容と、裏付け資料に記載された工事内容が一致していなければ、審査において経験として認定されない可能性があります。また、同一期間に複数の業種の経験として重複計上することは原則として認められていないため、記載する工事は業種ごとに整理して記入する必要があります。
電気工事・消防設備工事には別途注意が必要
電気工事および消防設備工事については、資格取得前に行った工事は実務経験の期間に算入できないという特別なルールがあります。また、電気工事業の登録をしていない状態で行った電気工事も、実務経験の対象外とされています。解体工事についても、解体工事業登録または建設業許可(解体工事業)のもとで行った経験のみが対象となります。これらの業種で実務経験を証明する場合は、経験期間の算定において特に注意が必要です。
証明書の作成は早めの準備が重要
実務経験証明書は、過去に在籍していた会社の代表者(証明者)から証明を得ることが原則です。元勤務先が倒産している場合や代表者と連絡が取れない場合は、やむを得ない理由を記載した上で自己証明の形をとることになりますが、こうした事情が生じると手続きが複雑になります。また、裏付け資料として必要な契約書・注文書等が手元にない場合は、行政庁との事前相談が必要になることもあります。証明書の作成は時間的余裕をもって着手することが大切です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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