建設業許可では、すでに他の業種の許可を持っている場合でも、新たに業種を追加する際には追加する業種ごとに専任技術者(営業所技術者等)の要件を満たしているかを改めて確認する必要があります。国家資格がない場合は、原則として当該業種に関する10年以上の実務経験を証明しなければなりません。この実務経験は、すでに許可を受けている業種の経験とは別に、追加業種の工事に実際に従事していたことを個別に裏付ける必要があります。

実務経験の証明で実際に求められる資料

 実務経験の証明において行政庁が確認するのは、工事請負契約書・注文書(請書)・請求書といった個々の取引書類であり、毎年の決算変更届に添付する工事経歴書そのものではありません。工事経歴書は完成工事高を業種別に集計するための別の書類であり、実務経験証明書(様式第九号)の直接の裏付け資料としては用いられないのが一般的です。この違いを理解せずに「工事経歴書に載っていないから証明できない」と早合点してしまうケースが見受けられます。

工事経歴書に記載がないことで生じる実務上の影響

 もっとも、工事経歴書に当該業種の実績が全く現れないことが無関係というわけではありません。すでに建設業許可を持つ事業者であれば、毎年の工事経歴書は主要な工事を業種ごとに整理した公的な記録であり、追加したい業種の工事が当時の工事経歴書に一件も出てこない場合、その業種に実際に従事していた実態があったのかという点で行政庁から慎重に確認される可能性があります。工事経歴書は直接の証明書類ではなくても、実態確認の際の間接的な手がかりとして意識されることがある、という位置づけで捉えておくとよいでしょう。

記載がない場合の対応方法

 工事経歴書に記載がない業種について実務経験を証明する場合は、当時の契約関係書類を業種ごとに改めて整理し直す作業が必要になります。契約書や注文書の工事内容欄に、追加業種に対応する工事であることが読み取れる記載があるかを一件ずつ確認し、内容が不明確なものについては工事写真や打合せ記録などの補強資料もあわせて準備します。求められる資料の種類や量は申請先の行政庁によって運用が異なるため、事前に窓口へ相談したうえで準備を進めることが望まれます。

今後の業種追加を見据えた実務上の注意点

 将来的に業種追加を検討している場合は、現在作成している工事経歴書の段階から、業種の分類を正確に行っておくことが有効な対策になります。工事経歴書は経営事項審査や許可更新の基礎資料としての役割も担っており、日頃から正しい業種分類で記載しておくことで、後の業種追加における実態確認の負担を軽減できます。実績があるにもかかわらず当時の書類が業種ごとに整理されていないために証明に苦労するケースは少なくないため、早めの整理が重要です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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