「同じ様式のはずなのに」で止まってしまう瞬間

 複数の都道府県で建設業許可を取得している事業者や、営業所の移転・増設で新たに他県の許可行政庁とやり取りすることになった事業者から、事業年度終了届の作成についてよく相談を受けるのが「去年まで別の県で通っていた書き方が、今回は差し戻された」というケースです。原因の多くは、「直前3年の各事業年度における工事施工金額」の記載範囲が、都道府県ごとに運用が異なることに気づかないまま作成してしまうことにあります。

愛知県は「その年度分のみ」の記載でよいケース

 愛知県知事許可の事業者が毎年提出する事業年度終了届では、この様式について届出をする事業年度分の金額のみを記載すればよいという運用が案内されています。過去分は既に提出済みの届出で行政庁側に蓄積されている、という考え方に基づくものです。そのため、毎年の作業としては当該年度の完成工事高を業種ごとに集計するだけで足り、比較的シンプルに済みます。

岐阜県では毎年「直前3年分」の記載が求められるケース

 一方、岐阜県知事許可の事業者では、様式の名称どおり届出のたびに直前3年分をあらためて記載する運用が案内されているケースがあります。前年・前々年の数字も含めて毎回書き起こす必要があるため、過去の届出控えを毎年参照しながら作成する手間が発生します。愛知県の感覚で「今年度分だけ書けばよい」と思い込んでしまうと、記載漏れとして窓口で指摘を受けることになります。

なぜこの違いに気づきにくいのか

 様式自体は国土交通省が定める全国共通のフォーマットであり、様式番号や項目名も同じであるため、「様式が同じなら書き方も同じはず」という思い込みが生じやすいのが実情です。しかし実際の記載範囲は、各行政庁が独自に定める提出の手引きに委ねられている部分があり、法令の条文だけを読んでも見えてこない運用差になっています。営業所が複数県にまたがる事業者や、県をまたいで担当替えがあった事業者ほど、この点でつまずきやすい傾向があります。

作成前に必ずやっておきたいこと

 このような運用差がある以上、事業年度終了届を作成する前に、管轄行政庁が公表している最新の手引きで記載範囲を確認することが欠かせません。他県での経験や過去の自社の書式をそのまま流用せず、提出先ごとのルールに立ち返って確認する習慣をつけることで、差し戻しによる手続きの遅延を防ぐことができます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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