国や地方公共団体が発注する公共工事は、民間工事とは異なり、入札に参加するための事前手続が制度として定められています。受注を目指す場合、最初に整理すべきなのは「何から着手するか」という順序です。

公共工事の受注には三段階の手続がある

 公共工事を直接請け負うまでには、建設業許可の取得、経営事項審査(経審)の受審、入札参加資格審査申請という三つの段階があります。いずれか一つでも欠けていれば、入札に参加することはできません。

 これらは同時並行で進められるものではなく、前の手続の結果が次の申請書類になるという積み上げ構造になっています。決算の時期によっては数か月単位の準備期間を見込んでおく必要があります。

スタート地点は建設業許可の取得

 建設業法上、軽微な建設工事であれば公共工事であっても許可なく請け負うこと自体は可能です。具体的には請負代金500万円未満、建築一式工事は1,500万円未満または木造住宅で延べ面積150平方メートル未満のものを指します。金額は消費税込みで判定し、注文者から材料の支給を受ける場合はその市場価格等を加算する点に注意が必要です。

 さらに重要なのは、経営事項審査は許可行政庁が行う審査であり、建設業許可を有していることが前提となる点です。入札参加資格審査でも工事の資格区分には許可を求める発注機関がほとんどであるため、公共工事への参入を考えるなら許可の取得が事実上の出発点となります。

見落とされやすい決算変更届

 許可取得後に忘れられやすいのが、毎事業年度終了後に提出する決算変更届(事業年度終了届)です。過年度分が未提出のままでは経審の申請に進めません。まずは届出状況の確認から始め、未提出があれば遡って整えておく必要があります。

経営状況分析から経営事項審査へ

 次の段階は経営状況分析です。国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関に財務諸表等を提出し、Y点に関する分析結果の通知を受けます。その結果を添えて許可行政庁へ経営規模等評価の申請と総合評定値の請求を行い、総合評定値(P点)の通知書を取得します。

 総合評定値は完成工事高、自己資本額、技術職員数、社会性等を数値化して算出され、発注機関による格付け(ランク)の基礎となります。

 なお経審の結果通知には期限があり、審査基準日から1年7か月が有効期間とされています。審査基準日は原則として申請直前の事業年度終了日であり、起算点は通知書の交付日ではありません。毎年決算後速やかに手続を進め、空白期間が生じないようにすることが求められます。

発注機関ごとに入札参加資格審査申請を行う

 経審を受けただけでは入札に参加できません。工事を受注したい発注機関ごとに入札参加資格審査申請を行い、有資格者名簿へ登載される必要があります。受付は一定期間に集中して行われる定時受付(定期受付)と、その期間外に随時行う随時受付に分かれるのが一般的で、名称・時期・申請方法は機関ごとに異なります。

 また、多くの発注機関では電子入札システムが導入されています。電子証明書(ICカード)やカードリーダーの準備、利用者登録が必要となる場合があり、資格審査と並行して進めておくと安心です。

令和8年7月からの経審改正にも注意

 経審の審査基準は定期的に改正されます。令和8年7月1日施行の改正では、社会性等(W点)について、建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度に係る加点の新設、加点対象となる建設機械の拡大、社会保険加入に関する評価項目の削除などが行われました。社会保険への加入は引き続き建設業許可の要件である点に変わりはありません。

決算日から逆算して組み立てる

 実務では、決算日を起点として決算変更届 → 経営状況分析 → 経営事項審査 → 入札参加資格審査申請という流れを逆算することが出発点になります。決算終了後おおむね4か月以内を目安に経審申請へ進めると、有効期間を切らさず継続しやすくなります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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