判断の基準は「創業時における財務諸表」

 個人事業から法人成りをした直後に建設業許可を申請する場合、その会社はまだ一度も決算期を迎えていません。この点について建設業許可事務ガイドラインは、財産的基礎の要件を満たすかどうかの判断を、既存の企業は申請時の直前の決算期における財務諸表により、新規設立の企業は創業時における財務諸表により行うと定めています。決算がないから審査できない、という扱いにはなっていません。

提出するのは「開始貸借対照表」

 ここでいう創業時における財務諸表が、実務上いわれる開始貸借対照表です。京都府の手引でも、最初の決算期を迎えていない法人については開始貸借対照表を基準に判断する旨が明記されています。愛知県の記載例では、貸借対照表(様式第十五号)の日付欄に決算日ではなく設立日を記入し、設立時点の内容を記載する扱いが示されています。損益計算書や株主資本等変動計算書などは添付を要しないとする運用が一般的ですが、様式の指定や添付範囲には行政庁ごとの差があるため、申請先への事前確認が欠かせません。

一般建設業の五百万円要件の見方

 一般建設業では、自己資本が五百万円以上であることが要件の一つとされています。法人の自己資本は貸借対照表の純資産合計を指すため、資本金を五百万円以上として設立していれば、開始貸借対照表の段階で要件を満たすことになります。これに満たない場合は、五百万円以上の預金残高証明書または融資証明書によって資金調達能力を示す方法があります。愛知県では、これらの証明書は基準日または発行日が申請直前四週間以内であることが求められています。

特定建設業を目指す場合の注意点

 特定建設業では、欠損の額が資本金の二十パーセントを超えないこと、流動比率が七十五パーセント以上であること、資本金二千万円以上かつ自己資本四千万円以上であることのすべてを満たす必要があります。資本金と自己資本の水準は、設立時の出資額でほぼ決まってしまいます。申請日までの増資によって基準を満たした場合の特例もありますが、これは資本金の額に限った取扱いであり、自己資本の額については別途基準を満たしている必要があります。

個人事業時代の数字は引き継がれない

 法人成りによって設立された会社は、個人事業主とは別の法人格です。個人事業時代の決算内容が、そのまま法人の財務諸表になるわけではありません。工事経歴書や直前三年の各事業年度における工事施工金額は実績がない場合でも作成が必要で、決算期を迎えていない時点では該当工事なしとして提出します。納税証明書についても、設立第一期で申告期限が到来していない場合は、その旨が記載されたものを取得することになります。

まとめ

 決算未到来という状況は、書類が不足しているのではなく、設立時点の数字をもとに判断する仕組みが用意されているという整理にすぎません。むしろ決算前のほうが作成書類は少なく済みます。なお、個人事業主が既に建設業許可を持っている場合には、法人成りを事業譲渡として承継の認可を受け、許可の空白期間を生じさせずに引き継ぐ方法もあります。どの進め方を選ぶかによって必要書類も期限も変わるため、早い段階での確認が有効です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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