同じ様式でも記載ルールは二通りある

 工事経歴書(様式第二号)は、前事業年度に完成した工事を業種ごとに一覧化する書類で、許可申請のほか、毎事業年度終了後四か月以内に提出する決算変更届にも添付します。ところが、同じ様式でありながら、経営事項審査(経審)を申請する者と申請しない者とで記載範囲のルールが異なります。この違いを知らないまま決算変更届の控えをそのまま流用すると、経審の受付段階で作り直しを求められることがあります。

経審を受けない場合の記載範囲

 経審の申請を行わない場合、記載範囲は比較的緩やかです。国土交通省の記載例でも、主な完成工事について業種ごとに請負代金の額の大きい順に記載し、それに続けて主な未成工事を記載するとされています。元請工事と下請工事を分けて並べ替える必要はなく、金額の大きいものから主な工事を拾っていけば足ります。なお、未成工事は別葉で作成する点は共通の取扱いです。

経審を受ける場合は二段階の七割ルール

 これに対し経審を申請する場合は、二段階の「七割ルール」に従います。まず元請工事だけを請負代金の大きい順に並べ、元請完成工事高の合計の七割を超えるところまで記載します。続けて、残りの元請工事と下請工事を合わせ、完成工事高全体の七割を超えるところまで記載します。各段階では、記載額が一千億円に達した場合や、軽微な工事(税込五百万円未満、建築一式工事は一千五百万円未満)が十件に達した場合に、その段階の記載を終えることができます。二段階目の件数は一段階目で記載した軽微な工事と合わせて判断し、細部の取扱いは行政庁により差があります。

消費税の扱いにも差がある

 金額の税区分にも違いがあります。経審を受ける場合、課税事業者は税抜きで作成するのが原則で、工事経歴書の合計額は様式第三号や完成工事高の集計と一致している必要があります。経審を受けない場合は税込・税抜のいずれでも差し支えありませんが、財務諸表と処理を統一することが前提です。ただし免税事業者の取扱いは行政庁により案内が分かれ、愛知県では工事経歴書を含めすべて税込みで作成するとされています。

どちらにも共通する記載事項

 一方で、配置技術者の氏名と、主任技術者か監理技術者かの別を記載する点は共通です。注文者や工事名に個人名を記載しない配慮、共同企業体で施工した工事について出資の割合を乗じた額または分担した工事額を記載すること、土木一式工事のプレストレストコンクリート工事などに該当する場合に略号を付すことなども、経審の有無を問わず求められます。

決算変更届の段階から見据えておく

 工事経歴書は、経審で用いる完成工事高が正しいことを裏付ける確認資料という側面を持ち、記載した金額の合計は他の様式と整合していなければなりません。将来的に公共工事への参加を検討している場合は、決算変更届を作成する段階から経審のルールを意識して整理しておくと、後から作り直す負担を避けやすくなります。迷う場合は許可行政庁の最新の手引きに当たることが基本です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

〒460-0008
愛知県名古屋市中区栄5丁目19-31 T&Mビル3F-3X
行政書士吉田哲朗事務所
吉田 哲朗
TEL052-380-3173
Mobile:090-6090-0386
Email:info@office-yoshida-te.com
Facebook
Instagram
X(Twitter)

YouTube

投稿者プロフィール

吉田哲朗
吉田哲朗