
許可の要否を分ける「軽微な建設工事」の範囲
建設業法第3条第1項は、建設工事の完成を請け負う営業を行う者に対し、原則として建設業許可を受けることを義務付けています。ただし同項ただし書により、政令で定める「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は許可が不要とされています。その範囲は建設業法施行令第1条の2に定められ、建築一式工事以外の工事は1件の請負代金の額が500万円に満たない工事、建築一式工事は1,500万円に満たない工事、または延べ面積150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事です。建築一式工事はこの2つの基準のいずれか一方を満たせば軽微な工事に該当します。なお「木造」とは建築基準法第2条第5号の主要構造部が木造であるもの、「住宅」とは延べ面積の2分の1以上を居住の用に供するものを指します。
500万円は税込・材料費込みで判断する
実務で誤解が多いのが金額の数え方です。建設業許可事務ガイドラインでは、法令中の「請負代金の額」には当該取引に係る消費税および地方消費税の額を含むものとされています。つまり判定は税込金額で行い、税込500万円未満とは税抜およそ454万円までが上限となります。税抜480万円の工事でも、消費税10%を加えれば528万円となり基準を超えます。また条文が「満たない」と規定しているため、請負代金がちょうど500万円の工事は軽微な建設工事に該当せず、許可が必要です。令和7年2月1日施行の施行令改正では特定建設業の下請代金の基準額が見直されましたが、軽微な建設工事の金額基準自体は変更されていません。
分割契約と注文者支給材の取扱い
建設業法施行令第1条の2第2項は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額を合計して判定すると定めています。ただし書で「正当な理由に基いて契約を分割したとき」は例外とされていますが、これは施工内容や工期が実質的に独立している場合などに限られ、基準額を下回らせる目的での分割は認められません。さらに同条第3項では、注文者が材料を提供する場合、その市場価格または市場価格および運送賃を請負代金の額に加えるとされています。施主支給材が多い工事では、実際に受け取る金額が500万円未満でも基準を超えることがあります。
附帯工事と追加工事における注意点
建設業法第4条により、許可を受けた業種の建設工事に附帯する他の業種の工事は、その業種の許可がなくても請け負うことができます。ただし建設業法第26条の2第2項では、当該附帯工事が軽微な建設工事に当たらない場合、その業種の要件を満たす専門技術者を配置して自ら施工するか、当該業種の許可を受けた建設業者に施工させなければならないと定められています。また、当初は軽微な建設工事として契約した案件でも、仕様変更や追加工事によって変更後の請負代金の総額が500万円以上になれば、許可が必要な工事として扱われます。追加契約を締結する前に総額を確認することが実務上の要点です。
無許可で請け負った場合のリスク
軽微な建設工事に当たらない工事を許可なく請け負った場合、建設業法第47条第1項第1号により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科され、同条第2項により情状によって両者が併科されることもあります。拘禁刑は令和7年6月1日施行の改正刑法により、従来の懲役・禁錮に代わって導入された刑種です。法人については第53条の両罰規定により1億円以下の罰金が科される可能性があります。さらに罰金刑を受けると建設業法第8条の欠格事由に該当し、その後5年間は建設業許可を取得できません。元請業者との取引継続や公共工事への参加にも影響が及ぶため、受注規模の拡大が見込まれる段階で許可取得の準備を進めることが現実的な対応といえます。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
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