
― 工事名をあげる際に気を付けるポイント ―
1 建設業許可における「工事内容」の意味
建設業許可を申請する際には、過去の工事実績や今後請け負う予定の工事内容を具体的に記載する必要があります。
これは、申請者がどのような工事を行ってきたか、またどの業種の許可が必要かを判断するための重要な資料となります。
ここでいう「工事内容」とは、単に「建築」「土木」といった大分類ではなく、実際に現場で行った具体的な工事の種類や作業内容を指します。
したがって、記載する際には、工種や工法を正確に表現することが求められます。
2 「工事名」を書くときに注意すべき表現
申請書に記載する工事名は、建設業法上の29業種区分に対応していなければなりません。
例えば「外構工事」と書くだけでは不十分で、それが「とび・土工工事」に該当するのか、「造園工事」に該当するのか、内容を見て判断できるようにする必要があります。
誤った例
- 「リフォーム工事」
- 「改修工事」
- 「一式工事」
これらのような曖昧な表現は、審査担当者にとって判断が難しく、補正を求められる原因になります。
正しい表現例
- 「木造住宅の屋根葺替工事」→「屋根工事業」
- 「外壁塗替え工事」→「塗装工事業」
- 「コンクリートブロック塀の設置工事」→「左官工事業」または「とび・土工工事業」
つまり、どのような材料・工法を使い、どの部分を施工したのかを明確に書くことが大切です。
3 請負金額や工期との整合性も重要
工事名だけでなく、請負金額や工期、元請・下請の別など、工事内容と整合していることも重要です。
例えば、塗装工事で請負金額が1,000万円を超える場合には、通常の住宅塗装ではなく、ビル外壁や橋梁塗装など大規模なものと推測されます。
このように、工事内容と金額のバランスが取れていないと、実態確認のために追加資料を求められる場合があります。
また、工期が極端に短い、または長い場合にも注意が必要です。
数日で終わるような内容に長期工期を記載してしまうと、誤記や整合性の疑いが生じる可能性があります。
4 下請工事・元請工事の違いを明確にする
建設業許可では、元請工事と下請工事の区別も重視されます。
特に「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」の実務経験を証明する際、どちらの立場で携わっていたかによって証明書の書き方が異なります。
- 元請工事の場合:発注者との契約内容や工事写真などが確認資料になります。
- 下請工事の場合:元請業者からの請負契約書や注文書などが必要です。
この点でも、**「どのような立場で、どの範囲の工事を行ったのか」**を具体的に記載することが求められます。
5 まとめ:具体性と正確性が信頼につながる
建設業許可申請では、**「どのような工事を、どのような内容で行ったか」**が最も重視されます。
工事名を簡略に書くと一見わかりやすく思えますが、実際の審査では逆効果になることも少なくありません。
- 工事内容は「実際の施工内容」に即して具体的に
- 工事名は「建設業29業種」に対応させて記載
- 金額・工期との整合を取る
- 元請・下請を明確にする
これらの基本を押さえることで、申請がスムーズに進み、行政庁からの補正指示を防ぐことができます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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