
建設業の取引関係では、元請負人と下請負人の間に立場の差が生じやすく、下請側が不利な状況に置かれる場面も少なくありません。
こうした中で重要なルールの一つが、不利益取扱いの禁止です。
不利益取扱いの禁止とは、下請負人が法令に基づき正当な通報を行ったことを理由として、元請負人が取引上の不利益を与えることを禁止する考え方です。
建設業法では、下請取引の適正化を図るため、この点が明確に規定されています。
不利益取扱いが問題となる背景
建設業では、工期や価格、契約条件などについて、元請と下請の交渉力に差が生じやすい構造があります。
そのため、下請負人が違反行為を指摘したり、監督行政庁へ通報した場合に、
- 仕事を回してもらえなくなる
- 次回以降の契約条件が不利になる
といった不安から、本来行うべき通報を控えてしまう状況が生じがちです。
このような構造を放置すれば、法令違反が表に出ず、業界全体の健全性が損なわれます。
そこで建設業法では、通報を理由とした報復的な取扱いそのものを禁止しています。
建設業法における不利益取扱いの禁止
建設業法第24条の5では、
下請負人が、建設業法で定められた下請取引に関する規定等の違反があるとして通報したことを理由に、元請負人が不利益な取扱いをしてはならない
とされています。
ここでいう「通報」とは、単なる意見表明ではなく、
下請代金の支払、契約内容、不当に低い請負代金など、建設業法が定める下請取引ルールの違反があるとして行うものを指します。
不利益取扱いに該当しやすい行為の例
問題となるのは、通報したことへの報復として行われる不利益取扱いです。
具体的には、次のような対応が典型例とされています。
- 正当な理由なく取引を停止する
- 継続的に発注していた工事を打ち切る
- 契約条件や支払条件を著しく悪化させる
これらの行為は、形式上は経営判断に見える場合でも、通報との因果関係が認められれば、不利益取扱いと判断される可能性があります。
判断のポイント
不利益取扱いに該当するかどうかは、次の点を踏まえて実質的に判断されます。
- 通報と不利な対応との時間的・内容的な関連性
- 客観的・合理的な経営上の理由があるか
- 従前の取引状況と比べて著しい不利益が生じていないか
合理的な理由が説明できる場合まで一律に禁止されるわけではありませんが、説明ができない対応は問題視されやすい点に注意が必要です。
まとめ
不利益取扱いの禁止は、下請負人が法令に基づく通報を行っても、不当に不利な立場に追い込まれないようにするための重要なルールです。
元請負人にとっては、取引判断の透明性と合理的な説明が不可欠であり、下請負人にとっては、正当な通報が守られる仕組みがあることを理解しておくことが重要です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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