建設現場において作成される「作業員名簿」は、法律上「必ず全ての工事で作成しなければならない」と明記されているわけではありません。
しかし近年の行政指導や現場運用の実態を見ると、事実上、ほぼすべての建設現場で作成が求められている状況にあり、「実質的に義務化されている」と評価されています。

この背景には、建設業法・労働安全衛生法・社会保険関係法令など、複数の法令が重なり合って運用されている現状があります。


作業員名簿の位置づけと法的根拠

作業員名簿そのものを直接義務付ける単独の条文はありません。
しかし、次のような制度との関係で、作成していないこと自体が問題視されやすい書類となっています。

・施工体制台帳の作成義務
元請業者は、一定規模以上の工事で施工体制台帳を作成し、現場に備え付ける義務があります。
この施工体制台帳の内容を裏付ける資料として、作業員名簿の提出や提示を求められるケースが多くなっています。

・現場に従事する作業員の把握義務
誰が、どの会社に所属し、どの立場で現場に入っているのかを把握できていない場合、元請業者の管理体制そのものが不十分と評価されるおそれがあります。


なぜ「実質義務化」と言われるのか

行政庁や労働基準監督署の立入調査、元請から下請への書類要求の実務では、「作業員名簿を作成していない」こと自体が説明対象になる場面が増えています。

特に次のような場面では、作業員名簿がないことがリスクになります。

・社会保険加入状況の確認
・一人親方と労働者の区別
・下請構造の整理(多重下請の有無)
・事故発生時の従事者特定

これらを口頭説明だけで済ませることは難しく、名簿という「形」で管理しているかどうかが重視される傾向にあります。


作業員名簿に記載される主な内容

一般的な作業員名簿には、次のような事項が記載されます。

・氏名
・所属会社名
・職種・作業内容
・社会保険加入状況
・現場への入退場日

これらは、元請が現場全体を把握するための最低限の情報とされています。


未作成によるリスク

作業員名簿を作成していない場合、直ちに罰則が科されるとは限りませんが、次のような影響が考えられます。

・行政指導時に管理体制不十分と評価される
・施工体制台帳との整合性が取れない
・元請から是正を求められる
・元請工事への参入が難しくなる

特に元請主導の現場では、「名簿を提出できない業者は現場に入れない」という運用が広がっています。


実務上のポイント

現在の実務では、**「作成義務があるかどうか」よりも、「作成していない理由を説明できるか」**が問われています。

説明が難しい以上、作業員名簿は作成しておくことが事実上の前提となっているのが実情です。


まとめ

作業員名簿は、条文上の明確な義務規定がない一方で、行政指導・元請管理・現場運営の実務において、実質的に必須の書類となっています。

建設業者としては、「求められたときにすぐ提出できる体制」を整えておくことが、リスク管理の観点からも重要です。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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