1 建築物省エネ法の基本的な目的

建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)は、地球温暖化対策の一環として制定されました。近年、建物から排出されるCO₂は全体の約3割を占めるとされ、住宅やオフィスなどの省エネルギー化は社会全体にとって重要な課題です。この法律の目的は、建築物の設計・建築・維持管理においてエネルギー効率を高め、快適性と環境負荷低減を両立させることにあります。

建築物は一度建てると長期間使用されるため、設計段階から省エネ性能を確保することが不可欠です。例えば、断熱性能の高い外壁・窓の採用や、高効率な空調・照明機器の導入が推進されています。さらに、ライフサイクル全体でのエネルギー消費を抑えるため、維持管理段階においても効率的な設備運用が求められています。

2 制度の背景と導入の流れ

建築物省エネ法は、2015年に制定され、2017年から段階的に施行されました。背景には、国際的な温室効果ガス削減の枠組み「パリ協定」への参加や、国内でのエネルギー自給率向上の必要性があります。法律の枠組みは以下の3つに大別されます。

  1. 新築建築物に対する省エネ基準の適合義務
     一定規模以上の非住宅建築物や住宅に、省エネ基準への適合が求められるようになりました。
  2. 既存建築物の省エネ性能向上
     大規模な改修工事を行う際、省エネ改修を同時に実施することを促す仕組みが整えられています。
  3. 建築主・設計者・施工者の責務明確化
     建築物のライフサイクルに関わる各主体に、省エネ配慮を行う責任が課されています。

3 改正の経緯と主な内容

建築物省エネ法は、社会情勢や技術革新に応じて改正が重ねられています。主な改正点は以下の通りです。

  • 2021年改正
     中小規模建築物にも省エネ適合義務を拡大。これにより、住宅分野での省エネ対策が一層進められました。
  • 2022年改正
     建築確認申請との連携が強化され、省エネ基準への適合確認がより実効性を持つ仕組みに改善されました。
  • 2025年以降の段階的義務化
     すべての新築住宅・非住宅建築物において省エネ基準適合を義務化する方向が示されています。これにより、省エネ性能の確保は建築物にとって必須条件となります。

4 改正による影響と展望

改正によって、設計者や施工者にはより高い専門性が求められます。建築士は省エネ基準を満たす設計を行うため、断熱材や開口部の性能評価を適切に行う必要があります。また、建築主にとっても初期コストが増える一方で、長期的には光熱費削減や資産価値向上につながります。

さらに、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及を背景に、省エネ性能は単なる義務を超え、社会的評価や事業戦略の一部になりつつあります。今後は、省エネ性能に加えて再生可能エネルギー活用や脱炭素技術との組み合わせが重視されるでしょう。


以上のように、建築物省エネ法は環境保護と快適な住環境を両立させるための重要な法律です。改正を重ねながら、より広範な建築物に適用が広がっており、建設業界や不動産業界に大きな影響を与えています。今後は、法律の遵守だけでなく、積極的に省エネ・脱炭素の取組みを進めることが、企業の信頼や競争力の向上につながると考えられます。

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