1 工事経歴書とは

工事経歴書は、建設業許可を受けている事業者が毎年提出する「事業年度終了届」に添付する重要な書類です。
過去1年間に施工した工事内容を整理し、どのような工事を行ったのかを行政庁に報告する役割を持ちます。公共工事の受注や経営事項審査の申請に直結するため、正確で信頼性の高い記載が求められます。

2 記載の基本ルール

工事経歴書には、直近1年間の完成工事について工事種類ごとにまとめて記載します。

  • 請負金額は1件ごとに1,000円未満を切り捨てる
  • 工事種類は建設業許可の業種区分に従って分類する
  • 元請・下請の別を明確に区分する

これらは形式的なルールですが、誤りがあると不備扱いとなり、再提出を求められることがあります。

3 工事種類の分類に注意

最も多い記入ミスが「工事種類の誤り」です。
例えば「舗装工事」と「とび・土工・コンクリート工事」を混同したり、「建築一式工事」と「大工工事」を区別できていなかったりするケースです。
許可業種に該当しない工事を記載してしまうと、虚偽申請とみなされる恐れもありますので、工事内容を正しく分類することが重要です。

4 現場名と工事内容の明確化

工事経歴書には、工事現場名や工事の種類が一目でわかるように記載することが欠かせません。
例えば「〇〇市立小学校改修工事(建築一式工事)」や「△△道路舗装工事(舗装工事)」といった形で、現場と業種を対応させて記録します。
現場名が曖昧であったり、工事種類が不明確だと、審査側が実態を把握できず、補足説明を求められる場合があります。
工事名からどの業種の工事かが判断できるように整理しておくことが信頼性の確保につながります。

5 代表的工事の抽出方法

工事経歴書には、すべての工事を記載するのではなく、主要な工事を抽出して記載します。

  • 公共工事については必ず記載する
  • 民間工事も、金額の大きいものや代表性のある工事を中心に記載する
  • 小規模工事はまとめて「その他」として記載することも可能

工事の規模・種類・元請下請のバランスを考慮することがポイントです。

6 金額と契約書類の整合性

工事経歴書に記載する金額は、契約書・請求書・決算書に基づいています。
記載金額と決算数値が一致していないと、事業年度終了届全体の整合性に疑義が生じるため、工事経歴書の記入前に必ず帳簿や契約書を確認しましょう。

7 経営事項審査との関係

工事経歴書は、経営事項審査における工事種類別完成工事高の基礎資料となります。
特に「元請工事」と「下請工事」を区分することは、点数評価に大きく影響します。
また、特定建設業許可の更新や追加許可の審査にも利用されるため、記載の正確さは将来の許可維持にも直結します。

8 よくある不備と対策

  • 工事種類の誤分類 → 国土交通省や都道府県のガイドラインを参照
  • 金額の端数処理 → 1,000円未満切捨てを徹底
  • 元請・下請の区別漏れ → 契約形態を確認
  • 記載工事数が極端に少ない → 小規模工事も含めてバランスよく抽出
  • 現場名や工事種類の不明確さ → 審査担当者が理解できる表記にする

9 まとめ

工事経歴書は形式的な提出書類に見えますが、実際には経営状況や施工実績を客観的に示す「信用資料」として扱われます。
正確な分類、現場名と工事内容の明示、金額の整合性、元請下請の区分を徹底することで、将来の許可更新や経営事項審査にもスムーズに対応できます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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