1 地盤のリスクとは

建設工事において、地盤の性質を正しく把握することは極めて重要です。地盤が軟弱である場合、建物の不同沈下や傾き、さらには地震時の液状化など、重大な被害を引き起こすおそれがあります。
特に住宅や中小規模建築物の場合、設計段階での地盤調査が不十分だと、完成後に思わぬ不具合が発生するケースもあります。「見えないリスク」こそが地盤の怖さといえるでしょう。

2 軟弱地盤がもたらす主な問題

地盤のリスクには、いくつかの典型的なパターンがあります。
まず、沈下リスクです。地中の土質がゆるい場合、建物の重量に耐えきれず、長期的に沈み込む現象が発生します。
次に、液状化リスク。これは地震などの振動により、地中の水分を含んだ砂層が液体のように変化し、地盤の支持力を失う現象です。特に沿岸部や埋立地では注意が必要です。
さらに、地すべり・崩落リスクも見逃せません。山間部や造成地では、雨水や地下水の流れによって土が動きやすくなり、斜面全体が滑る危険があります。

3 地盤調査の重要性

こうしたリスクを防ぐためには、事前の地盤調査が欠かせません。
戸建住宅で一般的に行われるのは「スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)」で、スクリュー状のロッドを回転させて地中の硬さを測定します。より大規模な建築物では、「ボーリング調査」などを行い、土の層構成や地下水位を詳しく把握します。
地盤調査の結果は、設計や基礎工法の選定に直結します。調査を省略することは、後の補修費用や安全性の面で大きな損失につながる可能性があります。

4 地盤改良と補強の方法

地盤の性質が良くない場合には、地盤改良工事を行います。代表的な方法としては次の3種類があります。

  • 表層改良工法:地表から2m程度の深さまでを固化材で改良する方法。比較的浅い軟弱層に適用されます。
  • 柱状改良工法:地中に円柱状の固化材を打ち込み、人工的な支持層をつくる方法。住宅地で広く採用されています。
  • 鋼管杭工法:さらに深い支持層に鋼管杭を打ち込み、建物を支える方法。重量のある建物や高層構造物に適しています。

これらの工法は、地盤調査の結果や建築物の規模に応じて選定されます。「どの改良が最も適切か」を専門家と協議し、根拠を持って決定することが重要です。

5 地盤保証と維持管理

近年では、住宅建設時に「地盤保証制度」を利用するケースが増えています。これは、地盤調査と改良工事を適切に行ったうえで、万一不同沈下などの損害が発生した場合に補償を受けられる仕組みです。
ただし、保証はあくまで施工と設計が適正に行われていることが前提となります。地盤改良後も排水や地表面の管理を怠ると、保証対象外となることがあります。
また、長期間の使用を見据え、雨水排水計画や地盤沈下の定期点検を行うことが、安心して暮らすための基本です。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
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吉田哲朗
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