1 専任技術者は「常勤」が前提

建設業法における専任技術者は、営業所ごとに常勤で勤務することが義務づけられています。
ここでいう「常勤」とは、他の事業者に雇用されていない状態で、その営業所の業務に専念していることを意味します。
したがって、以前勤めていた会社が廃業届を出しておらず、法的にはまだ「建設業者」として登録されている場合、形式上は二重在籍となり、常勤要件を満たさない恐れがあります。

2 廃業届を提出しないことの法的リスク

建設業許可業者が廃業した際には、30日以内に廃業届を提出する義務があります。
この届出を怠ると、行政庁の登録上は「営業を継続している状態」として扱われ、
元専任技術者の退職や新しい雇用先での兼任状況が正しく把握できません。

もしこの状態で別の会社が新たに専任技術者として届け出を行うと、許可要件を満たしていないとして不認定になる可能性があります。
さらに、虚偽の届出とみなされると、行政指導や許可取消の対象となることもあります。

3 二重登録が及ぼす影響

二重登録の問題は、単に書類上の不備にとどまりません。
行政庁から見れば、「同一人物が複数の会社に専任技術者として届けられている」という状態は、法令違反の疑いとして扱われます。
結果として、

  • 新たな許可申請や業種追加が認められない
  • 調査・聴取を受け、訂正・報告を求められる
  • 最悪の場合、旧会社・新会社ともに行政処分の対象になる
    といった不利益が生じる可能性があります。

4 トラブルを防ぐための対応策

このような事態を避けるためには、まず前職の会社が廃業届を確実に提出しているかを確認することが重要です。
もし提出がなされていない場合は、速やかに代表者へ依頼し、届出を完了してもらうようにしましょう。

また、転職先の会社でも、雇用契約書・社会保険加入状況・勤務実態を明確にしておくことが求められます。
行政庁が確認する際、実態の裏付け資料としてこれらの書類が重要な判断材料になります。

5 まとめ

廃業届を出していない旧会社に籍が残ったまま、別の許可業者で専任技術者として届け出ることは、
法令上の整合性を欠く行為であり、申請者・旧会社・新会社いずれにもリスクが及びます。
新たな許可を円滑に取得するためには、過去の雇用関係を整理し、法的手続きを確実に完了させてから次の段階へ進むことが大切です。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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