1.製造業から建設業へのステップアップ

製造業を営む事業者が、自社で製造した設備や装置を納入する際、据付や取付を行うケースがあります。
しかし、その作業が必ずしも建設業法上の「建設工事」に該当するとは限りません。
「どのような作業を行っているか」によって、建設業許可の要否が大きく変わります。


2.「機械器具設置工事業」とはどんな工事か

機械器具設置工事業とは、ボイラー・プレス・コンベヤー・タンク・発電設備など、
機械装置を基礎の上に据え付け、稼働できる状態にする工事を指します。
つまり、建物や構造物の一部として恒久的に設置し、固定・接合などの施工を伴う工事です。

一方で、ただ機械を取り付けるだけの作業や、納入に付随する据付は、
建設工事には該当せず、建設業の許可が不要な「物品の販売・設置」行為として扱われます。
この点を混同すると、無許可工事にあたるおそれがあるため、非常に注意が必要です。


3.他業種に該当する場合との違い

「機械の設置」という表現は幅広く、内容によっては他の建設業種に分類されます。
主な区分の目安は次のとおりです。

  • とび・土工工事業
     基礎工事やアンカー打設、重量物の据付など、構造物としての施工要素が強い作業
  • 管工事業
     ボイラーやポンプ設備などで、配管・冷却・給排水などの管路施工を伴う場合。
  • 電気工事業
     機械の動力源や制御系統を電気配線・接続する作業が中心となる場合。

つまり、施工の中心がどの分野にあるかによって、該当する許可業種が異なります。
プラント一式の据付工事のように、機械器具設置工事業として明確に分類できる場合を除き、
行政庁への事前相談が不可欠です。


4.経営業務管理責任者と専任技術者の要件

製造業から許可を取得する場合、経営業務管理責任者(経管)の経験として
「製造」「販売」だけの実績は建設業としての経営経験とみなされません。
請負契約に基づき、施工責任を負った実績を証明できることが求められます。

専任技術者についても、工場内での製造・組立作業のみでは「実務経験」と認められないことが多く、
据付・固定・調整など、建設現場での施工経験を証明できる資料(契約書、写真、報告書等)が必要です。


5.申請前の確認事項

製造業からの転用を検討する際は、次の点を整理しておきましょう。

  • 作業内容が建設業法上の「工事」に該当するかどうかを確認する。
  • 経管・専技の経験を請負工事として立証できるかを点検する。
  • 定款・登記簿の事業目的に「機械器具設置工事業」等を明記しておく。
  • 許可取得後の**届出義務(決算変更届・事業年度終了届)**も忘れずに管理する。

6.まとめ

機械を設置・取付する作業でも、建設工事に該当するものと、そうでないものがあるという点が最大の注意点です。
特に、「単なる据付」「納入に伴う取付」だけでは、建設業の許可は不要であり、
反対に、基礎への固定・配管・電気接続などを伴う工事は、明確に建設業の範囲に含まれます。

製造業から建設業へ展開する際は、まず自社の作業内容がどの業種にあたるのかを冷静に分析し、適切な許可区分で申請を行うことが大切です。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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