
建設業で財務諸表を作る理由は、税務申告のためだけではありません。
建設業許可の申請や、許可取得後の事業年度終了届、更新申請、経営事項審査など、許可制度の中で継続的に必要になる重要書類です。
特に許可業者は、毎事業年度終了後に財務内容を報告する義務があり、日頃から数字を整理しておくことが前提になります。
1.許可申請や事業年度終了届に必要だから
建設業許可では、申請時に財務諸表の提出が必要です。
法人の場合は、貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表などを作成します。
株式会社では事業報告書が必要になる場合もあり、会社の形態によって添付書類が追加されます。
また、許可取得後は毎事業年度終了後4か月以内に事業年度終了届(いわゆる決算変更届)を提出する必要があります。
この届出でも財務諸表の提出が必要になるため、毎年作成することになります。
2.会社の財産状態と経営状況を確認するため
建設業では、売上だけでは会社の状態は分かりません。
- 現金はいくらあるか
- 借入がどのくらいあるか
- 利益が出ているか
- 工事ごとの原価はどうか
これらを確認するために、財務諸表が必要になります。
特に建設業では、完成工事高・完成工事原価・未成工事など独特の項目があり、一般の業種よりも財務内容が許可制度と直結しています。
3.経営事項審査に必要になるから
公共工事を受注する場合は、経営事項審査を受ける必要があります。
この審査では、
- 自己資本額
- 利益の状況
- 財務内容
- 売上規模
などが評価対象になります。
経営事項審査の基礎になるのは、事業年度終了届で提出した財務諸表です。
つまり、財務諸表が整っていないと、経審を受けることも難しくなります。
4.許可更新や変更手続に影響するため
建設業許可は、取得すれば終わりではありません。
- 毎年の事業年度終了届
- 更新申請
- 業種追加
- 許可替え
- 経審
これらの手続では、過去の財務諸表が確認されます。
事業年度終了届が出ていない場合、更新申請が受け付けられないこともあります。
そのため、財務諸表の作成は単なる会計処理ではなく、許可を維持するための基本管理といえます。
5.経営判断の基礎になるため
財務諸表は行政に出すためだけの書類ではありません。
- どの工事で利益が出ているか
- 資金繰りに無理がないか
- 借入が増えすぎていないか
- 次年度の見通しはどうか
これらを判断する材料になります。
建設業は入金と支払のタイミングがずれやすく、資金管理が甘いと黒字でも資金不足になります。
だからこそ、毎年の財務諸表作成は許可のためでもあり、経営のためでもあると言えます。
まとめ
建設業で財務諸表を作る理由は、
- 許可申請に必要
- 事業年度終了届に必要
- 経営事項審査に必要
- 更新や変更手続に必要
- 経営管理に必要
という、制度上と実務上の両方の理由があります。
建設業では、数字の整理ができていないと許可も維持できず、経営判断もできません。
財務諸表は形式的に作るのではなく、許可を維持し、会社を続けるための基本書類として整えておくことが重要です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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