建設工事の施工業者間で、施工責任の範囲及び施工条件が不明確だと、紛争が起こりうる要因となります。
また、下請業者が工事を適正に見積もるためには、元請負人から、工事見積条件が明示されていることや、
下請業者に見積り落とし等の問題が生じないよう検討する機会を与えて、
請負代金の額の計算その他請負契約の維持に関する判断を行わせることが必要です。
そこで、建設工事の見積依頼時には工事の内容となるべき重要な事項をできる限り具体的に提示しなければならないとされています(建設業法第20条4項)。
見積にあたっては下請契約の具体的内容を提示することが必要
建設業法では、次の14の項目が定められています。
① 工事内容(最低限明示の必要がある項目は次の8項目)
・工事名称
・施工場所
・設計図書(数量等を含む)
・下請工事の責任範囲
・下請工事の工程及び下請工事を含む工事の全体工程
・見積条件及び他工種との関係部位、特殊部分に関する事項
・施工環境、施工制約に関する事項
・材料費、労働災害防止対策、産業廃棄物処理等に関する元請下請間の費用負担区分に関する事項
② 工事着手の時期及び工事完成の時期
③ 工事を施工しない日又は時間帯を定めをするときは、その内容
④ 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来高部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及支払
⑤ 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出が
あった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの算定方法に
関する定め
⑥ 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
⑦ 価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
⑧ 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑨ 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、
その内容及び方法に関する定め
⑩ 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
⑪ 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑫ 工事の目的物が種類又は品質び関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適後を
担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に
関する定めをするときは、その内容
⑬ 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害
⑭ 契約に関する紛争の解決方法
具体的内容が確定していない事項はその旨を明確に示すことが必要
元請負人は、上記に示した事項のうち具体的内容が確定していない事項がある場合にしては、
その旨を明確に示さなければなりません。
なお、正当な理由がないにもかかわらず、元請負人が、下請負人に対して契約までの間に
具体的な内容を提示しない場合は、建設業法20条4項に違反するおそれがあります。
見積条件の明確化のため、見積依頼は書面で行う
見積条件の明確化のためには、元請負人が見積条件を記載した書面を作成し、元請下請双方で保有する等が必要です。
工期や請負代金等に影響を及ぼす事象についての情報提供が必要
元請負人には、契約を締結する前に、工期請負代金額に影響を及ぼす次のような事象に関して事前に知りえた情報
について下請負人に提供しなければならないという義務があります。
・地盤の沈下、地下埋葬物による土壌の汚染その他の地中の状態に起因する事象
・騒音、振動その他の周辺の環境に配慮が必要な事象
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