・下請工事の施工において、無理な手段、期間等を下請負人に強いることは、手抜き工事、不良工事等に原因となるばかりか、経済的基のの弱い中小零細企業の経営の安定を阻害することになります。

・そこで、建設業法では、建設工事の注文者が自己の取引上の地位を不当に利用して、請負人に通常求められる原価に満たない低い請負金額での契約を強いることを禁止しています(建設業法第19条の3)。

以下の行為が禁止されています。

自己の取引上の地位を不当に利用

・自己の取引上の地位を不当に利用とは、元請負人間の取引依存度が高いなどの取引関係が存在している場合に、元請負人が、下請負人の指名権、選択権を背景に、元請負人の希望する価格による取引に応じない場合その後の取引において不利益な取扱があると示唆するなどして、下請負人と充分な協議を行うことなく、当該下請工事の施工に関し通常必要と認められる原価を下回る額での取引を下請負人に強要することです。

通常必要と認められる原価

・通常必要と認められる原価とは、当該工事の施工地域において当該工事を施工するために一般的に必要と認められる①~④の経費の合計値とされています。

① 直接工事費(材料費や工事費等、工事目的物の施工に直接必要な経費)

② 共通仮設費(現場事務所の営繕費や安全対策費等、工事全体にまたがって使う経費)

③ 現場管理費(現場社員の給与等、工事を管理するために必要な経費)

④ 一般管理費(会社の営繕部門や管理部門の人件費や経費等)

⑤ 利益

※通常建設工事の価格は、①~⑤の要素により構成されます。

不当に低い請負代金の禁止規定と契約変更

建設業法第19条の3により禁止される行為は、当該契約の締結に際して、不当に低い請負代金を強制することに限られません。

建設業法第19条の3は、契約の内容の変更などに対しても適用されることから、元請負人にあっては、契約締結後に元請負人が原価の上昇を伴うような工事内容の変更をしたのに、それに見合った下請代金の増額を行わないことや、一方的に下請代金を減額するとがないように留意する必要があります。

施工条件等を反映した合理的な請負代金

・下請負人に対して原価割れ受注を強制することがないようにするためには、元請負人において以下の対応を行うことが必要です。

① 下請負人に対して、当該契約を断っても今後の取引において不利益な取扱いを行わないことを明確に示すこと

② 下請代金の額の交渉に関し、自らの査定額と下請負人の見積額との間に乖離があった場合には、自らが積算根拠を明らかにしたり、自らの積算における工期等の設定が不適切なのもになっていないかについて下請負人の意見を参考として検証を行うなど、下請負人との協議をつくすこと