近年、建設業界では「働きやすさ」や「安心して働ける環境」づくりを重視した取り組みが進んでいます。なかでも、社会保険の加入促進や労働条件の改善は、国や業界団体が一体となって強く推し進めている分野です。これは、単に従業員の保護という側面だけでなく、企業としての信頼性や持続的な成長にも直結する重要なテーマとなっています。

1.社会保険加入率の向上が業界の潮流に

建設業では長年にわたり、社会保険未加入問題が指摘されてきました。特に中小の元請・下請業者では、保険未加入のまま現場で働く労働者が一定数存在していたことが問題視されていました。これに対して、国土交通省は元請企業に対して、下請企業の保険加入状況を確認・是正することを求める制度を導入し、保険未加入企業は現場に入場できないルールが一般化しています。

こうした取り組みの結果、建設業における社会保険の加入率は着実に改善しています。とりわけ、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の三保険すべてへの加入を徹底する動きが定着しており、「保険に加入していないと現場に入れない」ことが当たり前になりつつあります。

2.労働条件の改善が許可要件とも連動

労働環境の整備は、単に労働者の定着や安全確保を目的とするだけでなく、建設業許可の取得・維持にも密接に関わっています。建設業法では、社会保険の未加入企業は新規・更新の許可申請において不利となる場合があります。さらに、公共工事への入札参加を希望する企業にとっては、保険加入状況の透明性が評価対象となるケースもあります。

加えて、週休二日制の導入や時間外労働の適正化など、働き方改革を意識した就労環境整備も進められています。労働者のワークライフバランスを考慮した取り組みが「選ばれる企業」への第一歩となり、若年層の人材確保や外国人労働者の雇用拡大にも寄与するようになっています。

3.許可を取得・維持する上での現実的対策

社会保険未加入のまま許可申請や更新を行うことは、近年ますます厳しくなっています。実際、都道府県によっては、社会保険の適用対象となる従業員がいるにもかかわらず未加入の場合、「許可基準を満たしていない」として是正指導や許可不許可の判断が下されることがあります。

そのため、建設業者としては許可申請書類の提出前に、社会保険の加入状況をしっかりと確認し、不足があれば速やかに整備することが重要です。さらに、従業員の雇用契約書の明文化や、就業規則の整備、労働時間管理など、労働条件全体の見直しも行うことが求められています。

まとめ

建設業界では、社会保険加入の徹底と労働条件の改善が大きな流れとなっており、これらの取り組みは建設業許可の取得・維持においても重要なポイントです。持続可能な事業運営を行うためには、形式的な手続きだけでなく、実質的に労働者を守る体制づくりが欠かせません。これから建設業許可を取得する事業者にとって、労働条件の整備は「信頼される企業」への第一歩と言えるでしょう。

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