近年、日本各地で頻発する大規模地震や自然災害は、建築物の安全性に対する社会的関心を一層高めてきました。そのたびに見直されてきたのが「建築基準法」です。特に、耐震性能に関する法改正は、建物に求められる安全基準を大きく変化させてきました。

1. 阪神・淡路大震災で明らかになった課題

1995年に発生した阪神・淡路大震災では、多くの木造住宅が倒壊し、甚大な人的被害が発生しました。この災害は、当時の建築基準法における「旧耐震基準」が現実の大地震に対応しきれていなかったことを浮き彫りにしました。その結果、1981年に導入された「新耐震基準」の適用対象の明確化や、建物の構造計算方法に対する厳格な見直しが進みました。

2. 建築基準法が定める耐震性能の3分類

建築基準法は、建物に求められる耐震性能を大きく3つに分類しています。

  • 構造耐力上主要な部分の損傷防止:中規模地震(震度5程度)に対し、柱や梁などが損傷しないよう設計されていること。
  • 倒壊・崩壊の防止:大規模地震(震度6強〜7)でも、建物が倒壊しないよう最低限の構造耐力を確保すること。
  • 避難安全の確保:地震後に建物内から安全に避難できる構造と導線が確保されていること。

この3つの観点から耐震性が求められ、設計段階から厳格な確認がなされるようになっています。

3. 東日本大震災後のさらなる見直し

2011年の東日本大震災では、津波や地盤沈下など新たなリスクが明らかになり、耐震性能のみならず「構造計算適合性判定制度」や「津波避難ビルの指定制度」などが整備されました。特に高層建築物や多数の人が集まる建物については、構造設計の適正性を第三者が審査する仕組みが義務化され、設計の信頼性が飛躍的に向上しました。

4. 既存建物に対する耐震改修促進法との連動

建築基準法だけではなく、「耐震改修促進法」も改正され、既存の公共施設や老朽化した集合住宅等に対し、耐震診断や耐震補強工事を義務づける自治体も増えています。特に病院・学校・避難所など、防災拠点となる建物は優先的な対応が求められています。

5. これからの建物設計に求められる視点

法改正によって強化された建築基準法は、建物を「壊れない」ことに加え、「命を守る」ことを第一の目的にしています。今後の建築設計では、耐震性能に加え、復旧のしやすさや、周辺地域との安全な連携といった観点も重要視されるでしょう。

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