
公共工事は、地域社会の安全や利便性を支える極めて重要な事業です。その品質の確保と持続可能な建設体制の整備を目的として制定されたのが、「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」です。
本記事では、品確法の柱となる
①価格と品質を両立させる競争制度への転換
②担い手の確保・育成を見据えた環境整備
の2点に注目して解説いたします。
1.価格競争から「価格と品質の競争」へ
かつての公共工事では、最低価格を重視する入札方式が主流でした。しかしこの制度は、以下のような弊害を招いてきました。
- 工事品質の低下
- 施工後の不具合や早期劣化
- 工期の遅延や安全性の欠如
こうした課題を受け、現在では「価格と品質を総合的に評価する入札方式」が採用されています。
特に注目されているのが、
・総合評価落札方式
・技術提案や施工実績による加点制度
といった、技術力と価格のバランスを重視した評価方法です。
このような制度により、企業は過度な価格競争を避けて適正価格での受注が可能となり、資材・人材への適正投資が実現。結果として、工事品質の向上と公共資産の長寿命化が図られています。
2.担い手の確保と育成に向けた環境づくり
もう一つの大きな課題は、建設現場の担い手不足です。特に、若手技能者の減少や高齢化が深刻化しており、持続的な建設体制の確保が急務となっています。
これに対応するため、品確法では次のような措置が講じられています。
- 週休二日制の普及
- 適正工期の設定による働き方改革
- 技能者の賃金水準の見直し
さらに、
・若手の育成に取り組む企業への加点制度
・女性や高齢者も働きやすい現場環境整備
といった、多様な人材が活躍できる体制構築も評価されています。
また、ICT(情報通信技術)やi-Constructionの導入によって、省力化・効率化を図る取組みが進められ、若者にも魅力的な職場づくりが進展しています。
3.品質と担い手の両立が未来への責任
品確法が目指すのは、単なる法制度の整備ではありません。
「高品質な工事を持続的に支える人材の確保」
こそが、その真の目的といえます。
価格競争からの脱却と働き手の育成・定着を両立させることで、公共工事は初めてその使命を果たすことができます。
公共工事は、地域の未来を形づくる“社会的インフラの礎”です。発注者・受注者双方が責任を持ち、品確法の趣旨を真に理解し、実践していくことが求められています。
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