
建設業許可において、専任技術者を常勤で配置していることは絶対に欠かせない要件です。
そのため、退職・急病・死亡などにより専任技術者が不在になった瞬間、企業は許可要件を満たさない状態となります。
本記事では、専任技術者が不在となった場合に企業が取るべき正しい対応を解説します。
1 専任技術者の不在は“1日でも不可”が原則
建設業法では、営業所ごとに常勤の専任技術者を置くことが求められています。
そのため、
専任技術者が退職した瞬間に、許可要件を欠く状態となります。
退職届が当日、月末、急病等であっても例外はありません。
「短期間なら問題ない」という判断は誤りで、
空白期間が1日でも発生すれば、その業種の許可は維持できない
というのが原則です。
2 後任が決まっていない状態では許可を維持できない
ここがもっとも誤解されやすいポイントですが、
後任が確保できない状態では、当該業種の許可を継続することはできません。
変更届の制度上「退職だけ先に届け出る」ことは様式としては可能ですが、
それはすなわち、
- 「現在、専任技術者がいません」と自ら申告する届出
- =許可要件を欠いていることを届け出る行為
にほかなりません。
よって、
- 後任がいないまま退職届だけ提出し、
- 許可をそのまま保持する
という運用は法的にも実務的にも認められません。
後任が確保できない場合は、
その業種について「廃業届(全部または一部廃業)」を提出し、
後任が見つかった段階で再度許可申請を行う
という流れが正しい手続きとなります。
3 専任技術者が不在となった日当日にとるべき対応
専任技術者が不在となった場合、企業が行うべき最優先行動は以下のとおりです。
(1)社内で後任候補を即時確認する
- 国家資格保有者(施工管理技士等)
- 実務経験10年以上(一般建設業)
社内に資格者がいるかどうかを、当日中に確認します。
後任が当日付で配置できない場合、その時点で許可維持は不可能となります。
(2)工事契約・着工の調整を行う
専任技術者不在の状態で工事を請負うことは重大な違反となります。
- 新規契約は控える
- 技術者配置が必要な現場は着工延期
- 受注計画を即時見直す
など、法令違反を避けるための調整が必要です。
(3)後任がいない場合は廃業届の提出を検討
後任確保ができない場合は、
許可の全部または一部廃業届の提出が必要
となります。
そのうえで、後任候補を採用する・育成するなどの体制を整え、準備ができ次第、新規許可申請として再取得する流れになります。
4 行政庁がもっとも問題視するのは「放置」と「隠蔽」
専任技術者の不在は、行政庁にとって最も重大な管理項目です。
そのため、次のような行為は極めて危険です。
- 不在を認識しながら届出をしない
- 後任もいないのに業務を継続
- 空白期間をごまかす
- 退職日を遅らせて記載する
これらは監督処分・営業停止・許可取消の対象となり得ます。
5 突然の不在に備える“事前の予防策”が最重要
専任技術者が1名のみの場合、退職=即許可喪失につながります。
そのため、日頃から以下の体制づくりが欠かせません。
- 資格者の複数配置(ダブル体制)
- 実務経験者を計画的に育成
- 施工管理技士の受験支援制度の導入
- 業務を属人化させず、技術情報の共有体制を整える
特に小規模企業は、専任技術者が1名のみのことが多く、リスクが直撃します。
まとめ
専任技術者が不在になったときに押さえるべき最重要ポイントは次のとおりです。
- 専任技術者の空白は1日でも不可(これが原則)
- 後任が確保できなければ許可維持は不可能
- 不在のまま事業を続けると重大な法令違反
- 後任がいない場合は廃業届 → 再申請が正しい手続き
- 事前の体制整備こそ最大のリスク回避策
専任技術者の不在は、企業の許可維持に直結する最重大事項です。
日頃から備えることで、突然のトラブルを最小限に抑えることができます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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