
建設工事の請負契約において、不当に低い請負代金は建設業法上、重要な規制対象とされています。
これは単に「安い契約」を意味するものではなく、工事を適正に施工するために通常必要と認められる原価を下回る水準での契約を問題とする考え方です。
建設工事では、品質の確保や安全管理、適切な労務環境が不可欠です。
そのため、原価を無視した極端な価格設定は、施工不良や安全対策の不備につながるおそれがあり、法令上も是正の対象とされています。
建設業法における規制の位置づけ
建設業法第19条の3では、次のような規制が設けられています。
まず、**注文者(発注者)**については、自己の取引上の地位を不当に利用して、
工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金として契約を締結することが禁止されています。
さらに、建設業者側についても、正当な理由がないにもかかわらず、同様に原価に満たない金額で請負契約を締結することは禁止されています。
このように、規制の対象は注文者だけではなく、契約当事者双方に及んでいる点が重要です。
「原価に満たない」とはどう判断されるか
法律上、「いくら以下なら違反になる」という一律の金額基準は定められていません。
判断にあたっては、次のような要素を総合的に考慮します。
- 工事内容や工法
- 必要となる材料費・労務費
- 工期や安全管理の水準
- 同種・同規模工事の一般的な相場
単に価格が低いというだけでは直ちに問題とはならず、通常必要な原価を確保できているかどうかが実質的な判断基準となります。
勧告・公表という制度上の対応
不当に低い請負代金に該当する場合であっても、直ちに刑事罰が科されるわけではありません。
しかし、建設業法では、違反が認められた場合に、国土交通大臣または都道府県知事による勧告が行われ、これに従わない場合には、公表される制度が設けられています。
実務上は、この勧告・公表が大きな影響を持つため、形式的に罰則がないからといって軽視できるものではありません。
金額基準に関する補足(誤解防止)
条文そのものには明確な金額基準はありませんが、近年の制度改正により、勧告の対象となる契約の範囲については、一定の下限額が政令で整理されています。
具体的には、請負代金額が 500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上) の契約が、勧告制度の対象として位置づけられています。
もっとも、これはあくまで運用上の枠組みであり、請負代金の適正性そのものは、個別の工事内容に即して判断されます。
まとめ
不当に低い請負代金の問題は、価格競争を否定するものではありません。
重要なのは、工事を適正に施工できる原価が確保されているかどうかです。
建設業法では、
- 取引上の地位の不当利用
- 原価に満たない請負代金
という点を重視し、注文者・建設業者双方に対して規律を設けています。
契約を締結する際には、価格だけでなく、施工の実態や条件を踏まえた冷静な判断が求められます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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