1 貸借対照表(法人用)を作成する

貸借対照表の構成

貸借対照表は決算時における会社の財政状態を表わし、「資産の部」「負債の部」「純資産の部」の3つの部から構成されます。

「資産の部」は会社の調達した資金がどのように運用されているかを表します。この「資産の部」の合計は、「総資産」とも呼びます。

「負債の部」と「純資産の部」は資金の調達源泉、つまりどこから調達したかを表しています。

会社を運営する資金を金融機関など他人から調達した資金(負債)と株式の発行により調達した資金(純資産)に分けて表示しています。

貸借対照表は、株主総会、税務申告のために決算報告書として作成しますが、建設業の許可申請を行う場合、建設業法で定める株式で定めます。

金額は千円単位で記載します。千円未満の端数は切捨て、四捨五入、切下げのいずれの方法でかまいませんが統一しておく必要があります。

また、「その他」科目に属する資産や負債(流動資産、流動負債、固定負債)についても、その金額が資産等総額の100分の5を超えるものは、勘定科目を明記しなければなりません。

貸借対照表は、新規申請年度以降は毎年提出する必要があります。

「資産の部」の記載事項について作成ポイント

愛知県建設業許可申請の手引(申請書記載例編)P27~29参照

https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/456923.pdf

「資産の部」は、①流動資産、②固定資産、③繰延資産に分けられます。

①流動資産

流動資産とは流動性が高い、つまり現金化しやすい資産をいいます。

会社の保有する資産のうち、概ね1年以内に現金として回収されるものが流動資産に該当します。

②固定資産

固定資産とは、現金化に時間を要する資産のことで、1年を超えて使用したり、投資している資産をいいます。

固定資産はさらに有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分けられます。

③繰延資産

繰延資産とは、既に代金の支払は済んでいて、これに対応するサービスの提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって現れると期待される費用です。

繰延資産は来期以降の期間に配分して、少しずつ費用化していくため、費用化されるまでの期間は、貸借対照表の「資産の部」に計上されます。

繰延資産は財産的な実体もなければ価値もない点です。そのため、繰延資産は創立費、開業費、株式交付費、社債発行費等、開業費の5つがあります。

「負債の部」の記載事項についての作成ポイント

「負債の部」は、資産の部を流動資産と固定資産に区分したものと同様な基準によって、返済期限が1年以内のものを「流動負債」とし、1年超のものを「固定負債」として区分します。

「純資産の部」の記載事項についての作成ポイント

「純資産の部」は、大きく株主資本株主資本以外の各項目の2つに区分されます。

株主資本は、株主が払い込んだ「資本金」や「新株式申込証拠金」「資本剰余金」「利益剰余金」などから構成されています。株主資本は、さらに「自己株式」や「自己株式申込証拠金」も含みます。

株主資本以外の各項目は「評価・換算差額等」及び「新株予約権」に区分されます。

2 損益計算書(法人用)を作成する

愛知県建設業許可申請の手引(申請書記載例編)P30、31参照

https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/456923.pdf

売上高について注意する点

建設業の売上及び原価の計上方法には、工事完成基準工事進行基準の2つがあります。

工事完成基準とは、工事が完成し、引渡しが終了した時点で工事収益と工事原価を計上する方法です。

工事進行基準とは、引渡しが完了していない工事についても決算日における工事の進捗度を合理的に見積り、工事収益と工事原価をそれぞれ算出して計上する方法です。

工事完成基準を採用する場合、決算日において完成した工事の収益がすべて計上されている必要がります。

一方、工事進行基準では、請負契約金額と見積られた工事原価にそれぞれ工事の進捗割合をかけて完成工事高及び工事原価を計算します。この請負金額や原価の見積金額に変更がないか注意する必要があります。

①「事業兼売上高」には、建設業以外の事業による売上高の金額を記載します。

②「完成工事高」と「兼業事業売上高」の合計額を右側の欄に記載します。

売上原価について

①「完成工事原価」には、完成工事高として計上した収益にかかる工事原価の額を記載します。

②「兼業事業売上原価」には、建設業以外の事業にかかった仕入などの原価の額を記載します。

③「完成工事原価」と「兼業事業売上原価」の合計額を右側の欄に記載します。

④完成工事総利益及び兼業事業総利益には、それぞれ完成工事高から完成工事原価を差し引いた残額、及び

兼業事業売上高から兼業事業売上原価を差し引いた残額を記載します。

これの合計額が当期の売上総利益となります。右側に記載します。

販売費及び一般管理費について

販売費及び一般管理費は、会社本来の営業活動において発生した費用や本社の一般管理業務において発生した費用のことをいいます。

記載方法について、建設業許可申請用の様式に合わせることになるため、決算報告用の損益計算書と一致した勘定科目についてはそのまま転記します。

ただし、雑費に含める金額のうち、「販売費及び一般管理費」総額の10分の1を超えるような科目については、その科目名を表示する必要があります。

この場合は、発生していない勘定科目の欄を利用して表示します。不要な勘定科目名を二重線で消した右に科目名を記載し、金額を表示します。

売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益が営業利益です。

営業外収益について

営業外収益とは、企業の主たる営業活動(本業)以外の企業の投資活動や財務活動などによって生じた収益をいいます。

①「受取利息及び配当金」には、受取利息や公社債などの有価証券利息、株式などの受取配当金の金額を記載します。

②「その他」には、受取利息配当金以外の営業外収益を記載します。有価証券売却益や雑収入が該当します。

ただし、営業外収益総額の10分の1を超えるような科目については、その科目名を表示する必要があります。

右側に営業外収益の合計額を記載します。

営業外費用について

営業外費用とは、企業の主たる営業活動(本業)以外の企業の投資活動や財務活動などによって生じた費用をいいます。

①「支払利息」には、借入金利息、手形割引料、社債利息などの額を記載します。

②「貸倒引当金繰入額」「貸倒損失」にはそれぞれ営業取引以外で発生した金額を記載します。

③「その他」には、上記以外の営業外費用を記載します。繰延資産償却、有価証券売却損が該当します。

営業利益に営業外利益を加え、営業外費用を差し引いた金額を、「経常利益(損失)」に記載します。

その他

①特別利益、特別損失の「前期損益修正益(損)」には、前期以前に計上された損益の修正による金額を記載します。

「その他」には、この他の固定資産売却損益や、減損、災害による損失などの金額を記載します。

経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いたものが税引前当期純利益です。

②「法人税、住民税及び事業税」には当期の法人税等を記載します。

税効果会計の適用により計上される「法人税等調整額」の額をその下に記載し、合計額を右側に記載します。

③「当期純利益」税引き前当期純利益から法人税等の金額を差し引いた残額をいいます。

3 完成工事原価報告書を作成する

愛知県建設業許可申請の手引(申請書記載例編)P31参照

https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/456923.pd

完成工事原価報告書は、事業年度中に完成した工事の原価である①材料費、②労務費、③外注費、④経費の内訳を明らかにする書類です。

完成工事原価報告書は、会社の決算書である「製造原価報告書」を参考に作成します。

作成上の注意点は、「完成した工事」についての金額のみ記載します。

「製造原価報告書」には、未成工事にかかっわる原価の合計を「期末仕掛品」と表示していますが、完成工事原価報告書では、①材料費、②労務費、③外注費、④経費に降り分けなければなりません。なお、金額は千円単位です。

各科目の作成について、

①材料費

工事のために直接購入した素材、半製品、製品、材料貯蔵品勘定などから振り返られた材料費を記載します。

②労務費

現場で建設作業をする作業員に対する賃金、給料及び手当などの工事に直接要した人件費の額を記載します。人件費の中には、社会保険料などの法定福利費も含まれます。

なお、製造原価報告書には作業現場事務所の事務員など、直接雇用した作業員以外の賃金が含まれていますが、

完成工事原価報告書の労務費には含めず、④経費に計上します。

また、「うち労務外注費」には、外注費のうち実質的に大部分が労務費であるものを記入し、労務費の合計額に含めます。

③外注費

下請工事契約額をいいます。(労務費に含めたものは除く)

④経費

「経費」とは、完成工事について発生した材料費、労務費及び外注費以外の費用をいいます。
なお、「経費」のうち「人件費」とは、工事監督員及び現場事務所の事務職員等の給料等、退職金(繰入
額も含む。)、法定福利費及び福利厚生費等をいいます。

参考:「販売費及び一般管理費」のうち「従業員給料手当」等の人件費科目には、本支店等の管理部門、営
業部門及び兼業部門等にて発生した人件費を計上します。

⑤完成工事原価

上記①~④の合計額です。損益計算書の「完成工事原価」の数値と一致します。