建設業法が改正された理由

2019年6月に建設業法が改正され、2020年10月1日から施行されています。

建設業は、長時間労働が常態化しており、労働者も高齢化が進み、若者離れが進行しているという問題が指摘されました。

①建設業の働き方改革の促進

建設業界では、長時間労働が常態化しており、その是正が急務であるとして、建設業界に対して「働き方改革の推進」を行うための法改正がなされました。少子高齢化によって生産年齢人口が減少することや、育児や介護と仕事の両立をはじめとする働き方のニーズの多様化に対応するため、働き方改革として、2019年4月から順次施行されている労働基準法などが改正されています。

②建設現場の生産性向上

建設業で万人は、年齢別に技能者の数だけでいうと、60歳以上の者が82.8万人(建設業界全員の約25.2%)、こらに対し、30歳未満の者は、38.5万人(建設業界全員の11.1%)と若者不足が問題になっています。

このような問題に対応するため、建設現場の生産性の向上の取り組みを強化するという方向の法改正も行われました。

③持続可能な事業環境の確保

地方部を中心に建設業者が減少して、後継者がいないという問題が重要な経営問題となっています。このような建設業者が活躍できない状況を、活躍できるようにするために、将来にわたって業務を続けられるような持続可能な事業環境を整備する方向の法改正も行われました。

限りある人材の有効活用と若者の就職促進

近年の建設業における人手不足の解消や人件費の削減という課題解決を実現するために、限られた人材や資材を有効活用するための法改正が行われています。

①監理技術者の専任の緩和

これまでの建設業者は、元請の建設業許可業者に管理技術者を配置する際、請負金額が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)

以上の工事について、工事現場ごとに監理技術者を専任させることが求められ、その監理技術者は他の現場と兼任することができませんでした。しかし、改正後は監理技術者を補佐する者を現場に専任で配置することで監理技術者が複数現場を兼任できるようになりました。

②技術検定制度の見直し

若年層の活躍の場や経験の蓄積を実現するため、①監理技術者の専任の緩和とも関係する改正として、これまであった技術検定制度を変更し、従来の「技士」に加えて「技士補」という称号が新設されました。

③主任技術者の配置義務の見直し

これまで下請の建設業者は現場に主任技術者を必ず配置しなければなりませんでしたが、型砕工事や鉄筋工事で、元請が当該工事を施行するための下請契約の請負代金が3,500万円未満のときは主任技術者を配置しなくてもよくなりました。

④社会保険の未加入問題解決

令和元年の建設業法改正では、各作業員の社会保険加入状況の確認が行えるよう、社会保険加入者情報の正確性が担保される建設キャリアアップシステムの登録情報による保険加入状況の確認が原則化されました。

工期適正化や労務費相当分の支払などで新ルール

①工期適正化

建設業界の長時間労働にの是正として、中央建設業審議会が作成した工期に関する基準に沿って、まず、建設業者が依頼を受けた建設内容およびその準備に必要な日数を見積もり、注文者は、それを受けて通常必要と考えられる期間と比べて著しく短い工期による請負契約の締結が禁止されました(建築業法19条の5)。

これに違反した場合には、その注文者は、当該建設業の許可した国土交通大臣または都道府県知事から勧告を受け、さらに勧告に従わない場合は、その旨が公表されることがあり、元請が支払う下請代金のうち、労務費相当分については現金払いが必要であるとしました(建築業法24条の3の2項)。

このように、正社員である労働者の社会保険への加入が保証され、下請業務であっても、少なくとも労務の対価たる費やした費用は、勤務先の企業とっては、現金で手に入ることになります(建設業法19の6)。

この改正により、違反したら、勧告や公表の対象となっているため、通常必要と考えられている期間より短い工期の契約締結は違法とされる可能性があるので注意が必要です。

②労務費相当額の現金払い

従来から建設業者は取引を掛や手形による支払いが多く、回収するまで時間がかかり、下請けの建設業者が資金繰りに陥る状況が多く見受けられました。

そこで、元請業者が下請業者に下請代金を支払う際に、労務費に相当する部分については、現金での支払いが求められるようになりました(建設業法24条の3第2項)。これによって、建設業者が下請代金を受け取った際に、労働者に支払う賃金の原資が確保されことになりました。これは建設業に多く存在する一人親方などの実質元請の労働者となる事業者に配慮した改正だといえます。