― いまこそ見直したい「建物の診断」の重要性 ―

1. 建てて終わりではない「建物のライフサイクルコスト」

建物を新築する際、最も注目されるのは「建設費用」ですが、実はそれ以上に重くのしかかるのが維持補修費です。
国土交通省の試算によると、公共施設等においても建設費の1.5~2倍以上の維持補修コストが長期的に発生するケースは少なくありません。

これは民間のビルや工場、マンションなどでも同様で、維持・補修・更新にかかる費用が建設費を超える可能性は十分にあります。

2. なぜ維持補修費が高くつくのか?

維持補修費が膨らむ原因には次のようなものがあります:

  • 劣化の兆候を放置したことによる二次損傷
  • 適切な時期の点検・修繕を怠ったことによる全面改修
  • 法改正への対応(耐震基準、バリアフリー、断熱性能等)

こうした事態を防ぐには、早期発見と予防的な対応が不可欠です。

3. カギを握る「建物の診断」

ここで重要となるのが「建物診断(建物の健康診断)」です。
建物の診断とは、以下のような調査・確認作業を通じて、建物の劣化状況や安全性を客観的に把握することを指します。

  • 目視・触診・打音による外壁調査
  • コンクリートの中性化試験や鉄筋腐食の確認
  • 雨漏り・断熱性能のチェック
  • 給排水設備や空調の劣化度評価

診断結果をもとに、適切な補修計画を立てることで、将来的なコストを抑えることができます。

4. 「診断→計画→補修」のサイクルが企業価値を守る

建物を資産と捉え、その資産価値を長期にわたって維持するには、計画的な補修と診断が不可欠です。
特に、工場・倉庫・事務所などの建物は、企業活動の基盤そのもの。
一時的なダウンタイムや事故は、事業全体に大きな損失を与えることもあります。

したがって、「建てたら終わり」ではなく、定期診断を組み込んだ維持管理計画を最初から立てておくことが、経営の安定にもつながります。

5. 補助金・制度の活用でコストダウンも可能

なお、建物診断や省エネ・耐震改修といった維持管理に関連する取り組みに対しては、
自治体や国の補助制度が活用できるケースもあります。

例えば:

  • 中小企業向けの「エネルギー診断支援事業」
  • 木造住宅向けの「耐震診断・改修補助」
  • 工場設備の更新に使える「省エネ補助金」など

こうした制度を専門家と連携して適切に活用することで、負担を抑えつつ効果的な維持管理が可能です。

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吉田哲朗
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