
1 経営事項審査とは
建設業者が公共工事を受注するためには、入札参加資格を得る必要があります。その際に不可欠となるのが「経営事項審査(経審)」です。経審は、建設業法に基づき、経営状況や技術力、社会性などを数値化して評価する制度で、国や自治体が発注者としての信頼性を確保するための仕組みです。
審査結果は「総合評点(P点)」として示され、各自治体の入札参加資格審査に活用されます。そのため、経審は単なる形式的な手続きではなく、企業の受注機会を大きく左右する重要な申請です。
2 申請前に確認すべき準備事項
経審を円滑に進めるためには、まず以下の点を事前に確認することが重要です。
- 決算報告書の整備
建設業許可業者は、毎年「事業年度終了届」の提出が義務づけられています。決算書類が未提出の場合や記載に誤りがある場合、経審の申請自体が受け付けられません。最新の決算書類を整え、役所への提出が済んでいるか必ず確認しましょう。 - 工事経歴書の内容精査
過去1年分の工事実績を記載する工事経歴書は、評点に直結する重要な書類です。請負金額や工事種別に誤記があると、後の訂正や減点の原因となります。工事完成証明書や契約書と突き合わせて、正確に記録することが求められます。 - 技術職員名簿の整合性
経審では、配置されている技術者の資格や経験が評価対象になります。資格証明書の写しや実務経験証明など、証拠資料をそろえ、名簿と矛盾がないかを確認しましょう。
3 申請時の注意点
実際に経審を申請する際には、以下の点に注意が必要です。
- 申請期限の管理
経審は毎年申請が必要です。入札資格審査のスケジュールと連動しているため、申請が遅れると入札参加ができなくなるリスクがあります。自治体の受付期間を必ず確認し、余裕を持った準備を行うことが不可欠です。 - 電子申請・郵送対応の違い
都道府県や政令指定都市ごとに申請方法が異なります。電子申請が主流となりつつありますが、依然として紙申請を求める自治体もあります。最新の受付要領を確認して対応を誤らないようにしましょう。 - 添付書類の正確性
決算書類や納税証明書、社会保険加入状況など、経審に必要な書類は多岐にわたります。いずれも不備があると補正や再提出が必要となり、申請全体のスケジュールに影響します。
4 よくあるトラブルと対策
経審申請では、以下のようなトラブルが起こりやすいため注意が必要です。
- 工事経歴書の誤記入による減点
- 技術職員の資格証明書の不備
- 社会保険未加入による評価低下
- 決算書の処理方法の誤りによる差し戻し
これらはすべて事前の確認で防ぐことができます。特に社会保険加入状況は、建設業全体で強化されている評価項目であり、未対応のままでは大幅な減点対象となります。
5 まとめ
経営事項審査は、公共工事を受注するための入札資格に直結する極めて重要な手続きです。決算書類や工事経歴書、技術職員の情報など、基本的な書類を正しく整備することが、最終的な評点を大きく左右します。
「締切を守る」「書類の正確性を確認する」「最新の受付要領を確認する」―この3点を徹底することで、余計なトラブルを防ぎ、円滑な経審申請につながります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、
公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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